サカ坊 初段
千葉県市川市在住 33歳
平成15年3月3日
今から一年半前・・・。
普段から親しくしているジャイアン(現初段)、KojiKoji(現初段)、ダチョウハンター(現初段)と、合宿前日に焼肉を食べて我が家に一泊し、車一台で出陣するのが恒例となっていました。
このメンバーの中では僕が初の10人組手(昇段審査)を受ける立場であり、明らかに自分だけが周りの3名とはトーンが違います。
誰かの冗談で一瞬は笑うも、次の瞬間には乗っかっては散々に消えていく肉を見ていました。
「もー、サカ坊ぉ。なんだよ楽しくしようぜー」、
「やばい、サカ坊さん、また笑顔が消えてる」
等周囲の声は聞こえてますが、明日、自分が10人組手を終えた瞬間にはどうなっているんだろうか、または10人目まで完遂できるんだろうか・・・、そんなことが頭を過ぎるとカルビどころではなかったのです。
我が家に着くと心優しい面々は酒盛りを開始し、酔うと、とっとと寝床に消えていきました。
合宿所までは約2時間。
到着すると、僕と同じ顔をしたバイアグラ三島さんが居ました。
彼も今回、昇段審査に臨みます。
彼とは旧道場からの付き合いで、ほぼ同時期に入門し、昇級のタイミングも同じような感じでした。
今回こうして一緒に10人組手に臨むということは嬉しい事でもあります。
当日、周囲も気を使ってかあまり声をかけてこなかったのですが、何故か彼とだけは多くを話しました。
彼は今回の10人組手を行うにあたり、スタミナ面を心配してました。
「さか坊さん・・・、ぼく今・・・・、暗示かかってるんですよ・・・・・。」
「・・・へぇ・・・。どんな・・・?」
「僕ですね・・・、ついさっき、富士山を2往復して来たんですが、まだ余裕なんです・・・。すごい体力の持ち主なんで、10人くらい何ともないと思います・・・・・・・。」
「・・・・・ダッシュで富士山2往復か・・・。すごいな・・・。」
ストレッチの後、園田先生により諸注意、心構えについてお話があり、いよいよ夏合宿 昇級昇段審査が始まりました。
まずは白帯からだから、オレの出番は一番後・・・と思いきや、「えーそれでは、昇段審査から始めます。バイアグラ三島くん、前へ」
うっそーーーー!!!
慌ててドリンクの用意を始め、精神統一に入る頃にはバイアグラ三島さんの昇段審査が始まりました。
一人目からの猛ラッシュ、さすが富士山2往復を制した男。
7人目くらいになってくると、次は自分であることのプレッシャーと、彼の姿を直視できない自分に気がつきました。
それを察してか、クラさんが「サカ坊、サカ坊は1級なんだ。これを越えれば黒帯。相手してやる、って気持ちで行こう!相手されたらダメだ。」
そのクラさんの言葉が自分自身に暗示をかけることになりました。
「オレは現空研の茶帯。絶対に最後まで立っててやる。絶対に黒帯を取ってやる。」
「続いて、サカ坊。」
「押忍」
バイアグラ三島さんが見事に10人組手を完遂し、歓声と拍手の中、疲労困憊の表情で引き上げてきました。
そこで何か言葉を交わしたかは覚えてません。
「サカ坊、スタミナ配分も強さのうちだ」と、園田先生から最後のアドバイスを頂き、いざ出陣。
始まってしまえば暗示の通り、良いのを入れられても「もっと来い。最後は一本頂く」と比較的に冷静を保てたと思います。
前半で自分の不注意で顔面に相手の突きが入り鼻血が出るというアクシデントがありましたが、今までの自分の組手スタイルは崩さなかったと思います。
しかし後半の茶帯(8人目)、黒帯(9、10人目)はさすがに・・・。
特に8人目のジープマンは次回の審査で黒帯を狙います。
彼とは道場を離れても親しくバカな話も尽きませんが、空手の時は空手。
その切り替えと言いますか、日常とのメリハリの部分が気持ちよく、武道の素晴らしさの一つであると僕は思います。
しかも、彼との組手はいつも全力。
決してお互いを潰そうとしている訳ではなく、それが武道、そして現空研での礼儀です。
それ故、彼も全力、僕も全力でぶつかる。
9,10人目の為に余力を、なんて事が吹っ飛ぶくらいの激闘であったと自分では思っており、昇段審査で一番印象に残る組手となりました。
次回の彼の昇段審査には僕も同じように・・・と決意したのも事実です(笑)
(勿論、初心者の方や、相手への期待値、その場面場面に合わせた組手稽古を行うよう指導されておりますので入門を検討されている方はご安心下さい)
審査の詳細は園田先生が「10人組手 その2」で詳しく書いて頂いております。
白帯の時、目の前で見た10人組手。それは「自分には絶対に出来ない。無理だ」という印象しかありませんでした。
また実際に経験しても本当に人生の中で一番肉体的につらい試練であったと思います。
但し稽古を積むにつれ、5人、6人と審査する人数が増えていく過程で、やがて10人という目標が見えてくる事は間違いありません。
また僕は、現空研の成人の中で一番体が小さいです。
しかし、現空研で一番大きな人でも、顔くらいは苦もなく蹴ることが出来ます。
身長のハンディは、思ったよりありません。
世間では強くてデカイ相手は脅威ですが、弱い巨人も多々居ます(笑)
そうゆう方達と稽古を交えるというのは、日常生活で大きな意味があります。
いざ何らかのトラブルに巻き込まれて対峙した場合に違いが出てくると思います。
引き下がる、謝ると言った敗北的な行為については苦手な方も多いでしょうが、そこに勝ち負け、敗北感を感じるという概念自体が空手を始めてからは無くなりました。
つまらん勝負、謝っちゃって早く終わらせよう、ケガしたら稽古行けなくなるしケガさせても面倒だ、それより酒だ酒だ!という具合でしょうか(笑)
その自信というか心の余裕は、やっぱり10人組手という大きなハードルを越えた自信から来ているものと実感していおり、また黒帯であるというプライドもあります。
これは仕事やプライベート、あらゆる場面で僕を補完してくれています。
しかし、2段、3段と進むにつれ15人、20人と組手の人数も増えて行きますので、ここで落ち着いてはいけないという気持ちも当然ながらあります。
空手を始めてみたいなとい思う方、まずは勇気を出して道場に足を一歩踏み入れて見て下さい。
今いる会員もみんな(僕も)そうして踏み入れて来ましたので、周囲からその緊張を和らげようと声を掛けます。そうゆう暗黙のルールがあるのです。
現空研は厳しさもありますが、園田先生を始め、強さの裏付けには絶対的な優しさがあります。
まずは見学してみて下さい。
また小さいからと入門を躊躇されている方、ご連絡ください。僕なりに相談にのります。