ヒット カウンタ

10人組手 その2

10人組手のもう一人の挑戦者はサカ坊である。
サカ坊は以前も「現空研のサカ坊をしっているか」で詳しく紹介した。

そのサカ坊に関してであるが、ある人から次のようなメールをもらった。

「・・・・・・空手の難しさや面白さが分かり始めた頃だったのですが、その矢先に左足首を負傷し手術をしました。
幸いなことにある程度元通り回復できそうなのですが、復帰には数ヶ月はかかるとのこと。
かなり滅入っていたのですが、
HPで怪我についての記事や怪我から見事復帰された方の記事を拝見いたしまして勇気づけられましてメールいたしました。
    ・・・・・・・・・・・・
HPによるとサカ坊さんも大変なお怪我から見事復帰されたとのこと。
いったいどういった稽古で復活を成し遂げられたのかお教えいただけないでしょうか?宜しくお願い申し上げます。」

このように怪我をされた方でサカ坊の努力と精神力にまた復帰のノウハウ等に関心を持たれている方も少なくないであろう。
怪我や故障のリハビリに関しては、手術を要するレベルあるいは施した後であれば経験のある外科医の判断をまずあおがなければならない。

できれば、自分でも空手あるいは何らかの武道を実践されているドクターに聴てもらえればベストである。
我々は社会人としての復帰ではなく空手家としての復帰を望んでいるし、その具体的方法や可能性、期待値を知りたいのだが、私の経験ではこういったことに関心や知識のある医者は少ない。

一方、運良く正しい診断と処方箋を得ても、それを現実に実行していくのはあくまで己自身である。
本人の実践そして忍耐と努力なくしては完全な回復はおぼつかない。

サカ坊は実践した。
それでは今回のサカ坊の
10人組手の概要を記してみよう。

対戦相手は1人目のMI君のときと大体同じであるが、一部は異なる。
また最後の黒帯対戦者も異なる。

1回戦

重い蹴りが持ち前の緑帯のIT君。
2人とも前にでるタイプだ。

サカ坊は体格的に勝るIT君に押され負けることなく前へ前へ出て上中下段に突き蹴りを繰り出す。
対するIT君は接近すれば膝蹴りで応酬した。

全力を尽くしお互い一歩も譲らず2分間を戦い抜いた。

2回戦

次の相手は緑帯のEG君。
EG君は今回は初登場だ。

中段の左右回し蹴りで果敢に攻撃してきた。
EG君の上段に一瞬隙ができた。

そこにサカ坊の華麗な右上段回し蹴が炸裂。
最初の技ありだ。

しかし、すかさず中段の回し蹴で技ありを返す
EG君。
一進一退の攻防が続く中まだ余裕のあるサカ坊。

最後は中段の回し蹴で技あり、合わせ一本で最初の一本勝ちを得る。

3回戦

次の相手は回し蹴の上手なKUR君だ。
極めて近い間合いからの中段から上段へ変化する回し蹴りは要注意だ。

この戦いはレベルの高い蹴り合いになった。
お互いに足がよく上がるうえスピードも速い。

KUR君に中段回し蹴を取られるも、2分間を戦い抜く。
サカ坊はこの時点までは故障もなく余裕すら感じられた。

それが一変するのは次の対戦だ。

4回戦

相手は緑帯のKON君だ。
お互い気合が入ってきて接近戦での突き合いが増えてきた。

突っ込んだサカ坊に対してKON君のカウンターの上段突き。
この時事故が起きた。

顔面は寸止めのルールであったが、一瞬のタイミングのずれで右正拳が顔面を強打。
サカ坊は鼻からの出血にみまわれる。

一時中断するが、本人の続行の意思と私の判断で続行を決定。
互いに中段、上段の回し蹴の技ありの応酬の後
2分間フルの組手が終わった。

サカ坊の敢闘精神はいささかも衰えていなかったが前半戦での思いがけない出血はその後の戦いを想像以上に苦しいものにしていく。

5回戦

鼻血は止まらず、それが口の中に入ってくるサカ坊は呼吸動作にも影響がでてきた。
しかも今度の相手は
180CMを超える長身のKOJ君。

常に前に前にでてきたサカ坊であったが、この長身のKOJ君は簡単にそれを許さない。
KOJ君のリラックスした上段蹴りが襲う。

しかし蹴りが上段に集中した一瞬の隙をついてサカ坊の下段がタイミング良く入る。
思わず足をすくわれて転倒した
KOJ君。

ここからKOJ君の攻め方が変わる。
お互い接近しての打ち合いだ。

そしてついに出たサカ坊の至近距離からの上段回し蹴り。
20Cm以上の身長差をものともしない切れのある蹴りだ。

その後双方譲らない攻防が続く。
そして2分間の全力の組手が終了した。

6回戦

次の相手は切れのある上段回し蹴が得意なFUR君だ。
FUR君は離れては長身を生かした左右の回し蹴、飛び込もうとすれば牽制の前蹴、そして接近戦になれば左右の下突きといった具合にまったくサカ坊を休ませない。

サカ坊にはもはや瞬時に適正間合いに保つだけの運足のスピードはない。
しかし前に前に出て行く姿勢は彼の生き方そのものであるのかもしれない。

蹴りをもらうたびに苦悶にゆがむ顔。
それでも一瞬の隙をついた上段突きで技ありをとる。

後半は重い中段回し蹴で技ありを取られるも最後に渾身の回し蹴で技ありを奪い合わせ一本。

7回戦

今度は元ボクサーのIKE君だ。
IKE君は軽妙かつスピーディーなフットワークでサカ坊をふところには決して入らせない。

離れては蹴り接近しては突きで強烈な攻撃を休み無く続ける。
サカ坊の組手を研究し尽くした攻防だ。

もはやスタミナの大半を使い尽くし、鼻血も止まらないサカ坊にとっては人間サンドバックになりつつあった。
しかし、それでも前へ前へ出て行く気力、そして時折放つ豪快な上段蹴りは健在だ。

最後は中段前蹴、中段回し蹴と立て続けにとられるが、なんとか
2分間を耐えた。

8回戦

次の対戦相手はジープマンOTOだ。
彼とのパワフルな接近戦が始まった。

お互い足を止めて体をくっつけんばかりにしての突き合い、蹴り合いが続く。
ガンガン接近して攻めまくる
OTO君に対し、一歩も引こうとしないサカ坊。

情け容赦のない完全な消耗戦だ。
しかし立っているのがやっとという状態でありながらサカ坊は技あり
2本の合わせ一本勝ちをおさめたのだ。

そして、いよいよ残るは最後黒帯
2人との対戦。

最終章 

黒帯との対戦の詳細はやはり差し控えておこう。
サカ坊は膝半月板損傷での手術を乗り越え、前半戦での顔面強打による出血を乗り越え、審判の「そこまで」の声を確認するまで立ち続けた。

その技術、スタミナ、そして決して軽くはなかった怪我を克服した精神力に感動した者は多い。
心より拍手を送りたい。

サカ坊
10人組手を完遂。

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