平成16年6月26日の現空研フルコンタクト空手と日本空手協会麗澤大学空手道部の合同稽古におけるフルコンタクト組手は、友好的なムードの中、互いの技術の粋を尽くす好試合が展開された。
この対戦は、現空研は司馬、麗澤大学は2年生ながら黒帯の疋田君である。
大学生同士の対戦になった。
司馬は身長が1m90Cm近く、体重も約80kgの大型選手である。
父親は私の高校の同級生であり、大変親しい。
大学浪人の頃現空研に入門し、並外れた素質でぐんぐん成長し現在に至る。
大学ではアメリカンフットボール部に所属し筋力トレーニングに励んだ。
現在二段取得のための15人組手に向け特訓中である。
一方疋田君は麗澤高校の空手道部出身で空手暦は長い。
この長身の司馬に自ら名乗りをあげて挑戦した覇気のある若者だ。
この二人は身長差がかなりある。
司馬は自分の身長を生かした上段蹴りと最近筋肉トレーニングの成果でつけたパワーを生かした一撃の突きにも威力が増してきている。
疋田君はいかに自分の間合いで勝負するかがポイントになるだろう。
最初の構えは、それぞれの流派の特徴がそのまま現れた。
右足をやや引いた自然体で高めのガードでどっしりと構える司馬。
一方、軽い前屈で中段にかまえ軽くステップを踏んで隙を探る疋田君。
互いの流派の典型的な構えで対峙する二人
左 疋田 右 司馬
疋田君は距離を保ちながら、隙をついて必殺の右中段回し蹴、中段の逆突きを繰り出す。
しかし、体格差もあり、なかなか自分の距離での攻撃になりにくい。
麗澤大学の先輩らからももっと距離をつめろ、下がるなの声援が飛ぶ。
中盤を過ぎ、双方固さも取れ、リラックスした中にもパワフルな攻防が展開されるようになった。
疋田君 満を持した右上段の逆突が炸裂
さすがに疋田君の飛び込みのスピードは速く、効果的な突きがしばしばヒットする。
特に、攻撃が単発で終わらないところが、良く稽古を積んでいることを証明している。
体格差があるにもかかわらず、一瞬の隙につけこもうとする精神力とそれを支える技術は賞賛に値する。
疋田君の横蹴
司馬が時折放つ得意の上段の回蹴り
疋田君の上段突きが極まった瞬間
右回し蹴りもう一歩の踏み込みがあれば効果は絶大
現空研方式のフルコン組手では、接近した時のガードを高く構えることを全員、耳にタコができる程注意される。
それは、接近した状態では高い回し蹴は死角に入ることが多く、また中段と見せかけてガードを下げさせて上段に行く技は現空研の必殺技の一つである。
K-1のミルコクロポップ選手も似た技を使っている。
今回疋田君は不運にもその術中にはまってしまった。
分解写真でその解説をしてみよう。
分解写真1
司馬が回し蹴の体制に入る。
しかし膝のたたみ込みが大きく、相手には中段か上段かの判断が付き難い。
疋田君はここで咄嗟に中段の攻撃とみて左で下段払いの体制を取る。
分解写真2
膝頭を先行させる現空研式回し蹴は中盤から急激に膝が伸びスピードを増す。
この時点で恐らく疋田君は相手の蹴りが上段であったということに気付いたはずだ。
分解写真3
疋田君はすかさず受けを上段に切り替えようとするが、十分に溜めの効いた司馬の蹴りはリリースされた時はそのスピードは強烈に増しており、もはや間に合わせることは至難の業だ。
分解写真4
司馬は顔面に触れた状態で回し蹴をピタリと止める。
疋田君の迅速な受けも紙一重で間に合わなかった事が分かる。
フルコンの組手を最初に挑戦したとき良くもらうのがこの技だ。
特に接近戦を徹底的に稽古している者はこの技の効果を体で覚えている。
司馬のこの蹴りは最近磨きがかかっており、毎回一緒に稽古をしている現空研の者でもよくもらう。
この技はダチョーハンターも得意だ。
疋田君の左中段回し蹴と司馬の右上段回し蹴りが交錯
司馬の中段逆突を疋田君カウンターの右順突から右回し蹴の連絡技で返す
しかし疋田君は初めてのフルコン組手にもかかわらず、最後まで精神力の衰えもなく、一瞬でも隙があれば自分の距離に詰めて突、蹴りを繰り出し、すばらしい空手を見せてくれた。
何回かフルコンの体験を積めば、あっと言う間にフルコンでも力を発揮できるようになるだろう。
司馬は、最初、協会空手の飛び込みの速さを警戒し、前蹴りのカウンターを狙っていたが、相手の連続技の速さと威力でその作戦はすっかり吹っ飛んでしまい良い勉強になったとその後の交換会で感想を述べていた。