昨日おもしろい夢を見ました。
ピアニストが講演をしているのです。
そのピアニストはクラシックピアニスト兼ジャズピアニスト兼作曲家兼指揮者兼学者という万能音楽家でした。
そして、そのピアニストが即興演奏(アドリブ)の話をはじめたのです。
それから、その話を具体的に壇上のピアノで説明しながら曲を弾き始めました。
曲は「ネコ踏んじゃった」
「ネコ踏んじゃった」は知らない人はいないクラシックです。
小学生でも他人の弾いているのをみて見よう見まねで弾けるようになる簡単な曲です。
でも、この曲、#6個の嬰へ長調で楽譜に書くと結構難しそうに見えます。
このピアニストは何とこの曲をハ長調で弾き始めました。
私は本来絶対音感は無いのですが、夢の中では不思議なことに調性が簡単に分かったのです。
そして、不思議なことが次々と起こりました。
そのピアニストは「ネコ踏んじゃった」を最初はモーツァルト風にアレンジして弾きました。
そのメロディーを今でも覚えています。
最初は、ダダーン、ダダーンと両手で和音を叩きます。
次にメロディーはターラ・ターラ・ターラリラララ・・・・と流れていきます。
リズムは4/4拍子です。
そして終盤はジャズ風になりそれがとてもかっこ良いのです。
そしてドミナント(注1)
からトニック(注2)に解決するときの音が初めて聴く新鮮な響きでした。
私は、そこでピアニストに突然質問します。(夢の中です)
「今の和音は何ですか?」
ピアニストは説明をはじめました。
「私は昔フラメンコの先生から教わったことがあります。今の音はその応用です」
私
「具体的に音を教えて下さい。」
ピアニスト
「ドミナントはきっかけは何でも良いのです。めちゃくゃでも構いません。それをトニックに解決する過程に説得力がありさえすれば良いのです」
私
「分かりました。でも私の知りたいのは今弾いた具体的な音列です。教えて下さい」
ピアニスト
「私が今弾いたのはタマタマ出した音で大した意味はありません。それが一発でトニックに解決できる音だったのでそのまま採用しただけの話です。」
私
「意味は無くても結構です。音を教えて下さい。」
とここで、だんだん夢が醒めそうになってきました。
せっかく良い所なのにここで醒めてしまったのではもともこうもありません。
だいたい美味しそうなものを食べる夢も殆ど食べる直前に醒めてしまいます。
私は醒めそうになりながら必死にがんばって訊きました。
「音を教えて下さい」
ピアニスト
「分かりました。では、もう一度弾いてみますからこちらにきて見てください」
やった。私は壇上にかけ上って必死で鍵盤を見ます。
ピアニストは最後のドミナントの和音をバーンと弾きました。
私は右手だけを見て必至で記憶しました。
ピアニストは音名をドイツ語で言いました。(普通ジャズは英語ですがクラシックはドイツ語で音を言います。)
「○○○○」
その時点で残念なことに、はっと夢から醒めてしまいました。
その○○○○を確かに聞いたのですが夢から醒めた時点では覚えていません。
最後の2音は「ハー、ツェー」だったような気がします。
でも、音の響きは目が醒めた後もいくらか残っていました。
また手の形も(映像)もかすかに記憶に残っています。
私は、起きるや否や顔も洗わずピアノに向かいました。
この音を再現したかったのです。
手の形とハー(シ)、ツェー(ド)、音は4音、それとかすかに頭に残っている響き、これだけが頼りです。
でもどうしても再現できません。
ハー(シ)、ツェー(ド)はハ長調のトニックの構成音です。
ジャズ風にコードで言えばCM7(シーメジャーセブンス)です。
ただ、ドミナントG7(ジーセブンス)の第3音に4度を重ねた音でもあります。
記憶の中の手の形は下にエフ(ファ)ゲー(ソ)を重ねた格好のようでもありました。
でも、音を出してみるとちょっと違う気もするし。
結局、結論は出ないままです。
それにしても、なんと具体的で鮮明な夢なのでしょう。
カラーの夢の話は聞いたことがありますが、音のしかも絶対調整の音列がこれほど具体的にでる夢の話は私は聞いたことがありません。
プロの音楽家の人ではありふれた事なのかもしれませんが、私にとってははじめてで本当にびっくりしました。
夢というのは大体思うようにいかないものが殆どです。
空手家の人は一度は夢の中で空手を使ったことがあると思いますが、殆どは上手くできなかった夢が多いと思います。
思うように手足が動かないとか、できるはずの動作がどうしもできないとか。
私も何度もこういった悔しい夢を見たことがあります。
しかし、今回の音楽の夢は反対です。
自分では出来ない、聞いたこともない音が頭の中で響き渡ったのです。
しかも、音列までも途中まで解析できています。
そういえば、昔催眠術で退行催眠(?と言ったかな)で自分をどんどん過去に遡っていくという実験をやり、昔(前世)ピアニストだったという人が突然ピアノを弾き始めるといった場面をテレビで見たことがあります。
その人は全然ピアノの弾けない人なのですが、催眠状態ではパラパラとピアノを弾いてのけたのです。
もし、これがやらせとかではなく本物だとしたら驚くべき事です。
ピアノだけでなく、訓練を積まなくては到底獲得できない特殊技能を、こうした精神作用だけで実現できる可能性があるということになるのですから。
今回の私の夢は夢の中の先生が私に教えてくれるという形になっていますが、夢を見たのは私自身ですから、全てが私の頭の中で構成されたはずです。
人間は時には常識では計り知れない能力や現象を生み出すものですね。
注1 ドミナント 空手で言うと誘いや崩しあるいはフェイントの突き蹴りに相当し、単独ではフイニッシュに至らず不安定であり、最終的な一本勝ちという安住の地に行きたいという状況。
注2 トニック いわゆる最終的な安定状態である。突き、蹴りで一本とった形。