なかなか稽古に出られないことを気にしている人たちへ。
空手は武道ですからどんなに注意深く稽古していても、怪我や故障にみまわれることがあります。
これは初心者でも熟練者でも同じです。
それぞれのレベルでトラブルは発生します。
毎週欠かさず道場に通うつもりでいたのに、腰を痛めてしまったか、ひどい風邪をひいてしまったということは、誰でも経験します。
せっかく皆勤賞(現空研にはありませんが)を狙っていたのに、といって無理をすることはよくありません。
休むべきときには休むことも必要です。
筋力トレーニングをハードに行っていれば、何らかの怪我をしないほうがめずらしいくらいです。
例えば、肉離れを起こしたとします。
無理をすればかえって悪化させることもあります。
しかし、軽度の怪我であれば、多少の無理が良い意味での早期リハビリになり、回復を早めることもあります。
軽い筋肉痛など、少し無理をして動かしたほうが結果的に速く回復するなどは日常経験することです。
多少の無理をしても良いか、悪いかといった判断は、雑念を払って「自分の肉体と会話」することです。
現空研は出席率第一主義ではありませんから、「自分の肉体と会話」して、休んだほうが良いという肉体のシグナルを感じたら、多少後ろ髪を引かれる気がしても勇気を持って休んで下さい。
中には、無休という硬い決心をして、ずっと根を詰めてやってきたのに、ちょっとしたきっかけで休んでしまうと、そのままズルズルと休んでしまい、そのうち体がなまってきて、道場から離れてしまう人もいます。
あまりに、ハードでまじめな決心をしたため、ちょっとしたほころびでも、ガッカリしてしまい、緊張の糸が切れるためです。
こういう決心を私は「硬い決心」といってあまり評価していません。
例えば、禁煙を誓って、壁に「死んでもタバコは喫いません」などと貼って、がんばっている人が、昔の友人なんかと一杯やっているうちに気がゆるんでついついタバコを喫ってしまいます。
正気にもどったとき、決心が壊れたことの罪悪感となさけなさで、ガタガタと自己崩壊してしまい、もとのヘビースモーカーに戻る、といったことは良くあります。
「場合によっては喫うこともあるかもしれないが、タバコはできる限り喫わない」
といった決心のほうが長続きします。
大人の社会人であれば、全てを例外なしの定規で線をひいたように行動できるわけはありません。
それを無理に実行しようとすれば、いんろな摩擦も生みますし、トラブルも発生します。
そして、それが実行できないという結果が自己嫌悪を生むこともあります。
もっと悪いことは、どうせ、俺は何にもできないつまらない人間なんだ、と変に開き直って自分の不甲斐ない行動の理由付けにしてしまうことです。
こういう人は、自分だけがつまらない人間だとおもしろくないので、仲間を探します。
「人間なんて偉そうなこと言っていても一皮向けば皆同じさ」というのが口癖です。
そうだそうだという弱いやつは結構いますから、孤独にはなりません。
そして毎晩どっかの飲み屋でぐだをまいているのです。
人間、目的があればどんな苦痛にも耐えることができます。
忠臣蔵の赤穂浪士が、町のチンピラに喧嘩をうられても、罵倒されても、平然としていられたのがその例です。
これは、どこまで史実かは知りませんが、心情としては十分理解できます。
強くなるということが、人間として重要な意味を持っていることを理解し、
それを努力することで獲得できるという考えに賛同し、
現実に行動を起こすというプロセスを経て、空手を学ぶ決心したのであれば、
空手は人生のトピックスではなく、人生そのものなのですから、稽古を1日や2日休むなんてことは屁でもありません。
場合によっては何年も休んでも構いません。
しかし、止めないで続けるという軟らかな決心が大切です。
もちろん骨の一本や二本折れても続けるといった覇気もりっぱな精神です。(たとえば当会のクラさんはそうです)
いずれにせよ、休むか休まないかといった判断は、医者の判断であるとか、自分自身の肉体との会話であるとか、仕事や環境上の理由であれば、勇気を持って決断します。
少し、疲れたから、英気を養うという理由でも良いのです。主体的に決めていたことなら理由はなんでも構いません。
変に硬い決心をしていて、たまたま一瞬の怠惰な感情で崩れたのをきっかけにズルズルと低きに流れるというのが最もダメなケースです。
ちょっとしたスキャンダルでガタガタになる清廉潔白をうりものにしたどこかの大統領のような男と、
「人間なんて一皮むけばみな同じ」といって開き直っているクズは同じように見えます。
「なるべく禁煙するようにしています。この一週間で3本しか喫っていません。」
という人のほうが、
「禁煙を始めてまだ一本も喫ってないぞ。」
と豪語する人より、私は評価します。
いやー仕事が忙しくて、といって何箇月も休みながら、暇になれば、集中的に道場に来るといったことを10年以上続けるような人はすはらしいです。