闇夜の対決は、何度も聞いたが肝心のところが抜けているではないか、というご指摘を受けた。
確かに、一番肝心なところが抜けている。
忘れていたわけではないのである。
あまりに専門的(?)になるので、あらためて書こうと思っていたのだ。
しかし、この部分が抜けると話しの趣旨が変わってくるという鋭い批判に耐え兼ねて、ついに門外不出の奥義(?)にも関わる部分を公開する運びとなってしまった。
実は、このどら猫の親分がじりじりと近づき、回し蹴りが決まるまでの短い時間には以下のような細かい駆け引きがあったことをあらためて述べよう。
これはあくまで想像であるが、親分の心の動きと私の対応を時系列に述べてみる。
親分「こいつ、人間のくせにやけに殺気のあるやつだ。普通なら逃げるところだが、後ろは行き止まりだ。へたに逃げるとへたを打つことになる。ここは勝負するしかないな」
私「猫のくせに、堂々と向かってきやがる。俺の脇をすり抜けるつもりか。すごいやつだ」
親分「こいつ人間のくせに何か技を持っているな、しかし俺は猫。スピードでは絶対負けない」
私「・・・スピードでは負けないと踏んだな・・・」
私は右足を軸に左足はほんのわずか地面にタッチした典型的な猫足で構えた。
これは、いつでも左足をカウンターで出せる構えだ。
そして、左側に少し大き目の空間を空けた。
これは、言ってみれば、サッカーのペナルティーキックで、ゴールキーパーが山を張るようなものだ。
蹴りやすい左の足の方を隙間を大きく空けて、そこをすり抜けようとする一瞬にカウンターの蹴りをくれやすいようにするためだ。
親分は案の定、しずかに左よりに近づいてきた。
そして、一瞬のダッシュ。
やっぱり。
そう。親分は直前で方向を変え、斜めに私に向かって猛然と突っ込んできたのだ。
密着状態では蹴りが出せないことを知っているかのように。
「かかったな、このやろう。」私は心の中で叫んだ。
実は、私は、この親分猫の今までの抜かりのなさから、簡単に人間の罠にかかるようなタマではないと思い、いちかばちかで、この行動に山を張っていたのだ。
すかさず、おとりの左足に体重移動するや、タイミングを合わせて後方の右足でまわし蹴りを放ったのだ。
しかし、ものすごい親分のスピード。
ヒットしたのはやはり奇跡的だ。
作戦と幸運の両方が味方をしてくれなければ、こうはいかなかっただろう。
あなたは、こんな猫に会ったことありますか?