2010/06/30
対戦者たち
先日takagi初段の15人組手が行われました。
今だから話せるのですが、私は今回takagi初段の2段の推薦を出すのを随分と悩みました。
悩みは彼の空手の実力ではありません。
彼の実力はその技術、パワー、精神力どれを取っても、今までの15人組手の挑戦者、そして今回の他の挑戦者と比べてもいささかも見劣りするものではありません。同等あるいはそれ以上かもしれません。
彼の今までの行動や道場での態度、そして一家全員で空手に打ち込む姿は現代に生きる武士道そのものだと思っています。
伝統系の道場で指導員までやっていた彼がてあえて現空研に入門するのには訳がありました。
それは、彼だけでなく私も含めて多くの人が悩んだり悩む可能性のある事でした。
しかし、彼は強い決意を持ってその事態を克服していきます。
やがて、その問題は解決し、目標はもっと高い前向きのものに変わっていったようでした。
順風満帆に見えた一家にあるとき晴天の霹靂とも言うべき不幸が襲い掛かりました。
それは彼自身の思いもかけない病です。
180Cmを越える身長に、がっちりとして筋肉をまとった健康体の権化のような彼に突然病魔がおそいかかりました。
一時は死も覚悟した状況でしたが、彼自身の気迫と努力そして家族の団結した力でこれを克服し、やがて道場復帰の日を迎えることができました。
最初はリハビリ程度の運動から始め、持ち前の精神力と根気で病という大敵に勝利したのです。
一旦回復してからの彼の活躍は以前にも増した鬼気迫るものがありました。
一旦死の淵を見た人間の強さと良い意味での開き直りがそうさせたのかもしれません。
性格はもともと明るいので、事情を良く知らない人は最悪事の彼の深刻さは想像できないかもしれませんが、私はそれが十分理解できていました。
そして理解できるからこそ今回の2段審査推薦となったのです。
彼からはしばらくしてメールをもらいました。
それは、審査、特に15人組手に対する覚悟を語った長文でした。
厳しい社会情勢の中での会社の仕事の事、やっと健康を取り戻した体の事。
一家の大黒柱の自分が倒れた場合の心配や苦悩、その他モロモロの大きな問題を全て飲み込んだ上での15人組手受諾の返事でした。
私も含めて現空研のメンバーの大半はそれぞれの家庭の大黒柱です。
私が毎回毎回「安全性」と怪我をしない、させないと念仏のように唱えているのは、我々は倒れたら自分だけの問題ではないからです。
ですから、彼の悩みや苦しさはは私自身の悩み苦しみとして私にも重くのしかかってきました。
しかし、彼の本心はやりたいという事は言わなくてもわかります。
時間がゆるせば東京道場だけでなく我孫子道場にも毎週のごとく通い、一旦組手になると普段のにこにこしたやさしい顔が鬼神のごとく気迫にみちた顔となる姿が全てを物語っています。
私は、この時点である条件を付けてこの15人組手を行う事を決心しました。
勿論この条件は本人は勿論、現空研の誰一人、家族にも話をしませんでした。
それは彼自身の男としての誇と覚悟を確認したかった事と、会の責任者としてのけじめでもありました。
そしていよいよ本日その時を迎えます。
いくつかの条件を申し渡しましたが、これらの中で一番大きなポイントは、
一旦15人組手が始まったら、続行、中止を一切本人の意思を斟酌しないというものでした。
「生殺与奪の全権利を私に委ねて頂きたい」というものでした。
通常は本人の意思と審判、あるいは審判長たる私の意見で総合的な見地で続行可、不可を決定するのですが、今回は本人の意思は無視させていただくということを開始直前に宣言しました。
彼の言動と今までの態度から、彼はどんな状況になっても決してギブアッフしないだろうという事は当然予想できていました。
私は医者ではないので彼の体の状態を深く知っているわけではありません。
しかし、多くの人たちの修羅場を見、そして体験もしてきた男としての第六感が最悪の事態もほんのわずかですが想起されていました。
そんな大げさなと思う人もいるかもしれません。
万が一ということもあるのです。そもそも武道とは万が一に備えるためのものです。
一言で言うと何があっても「彼に死んでほしくない」の一点です。
そういう事態になる確率は100万分の1かもしれない。
もちくろんこれは彼だけてはなく、審査を受ける者全てに言えることで、もっと広く言えば普段町中を歩いているだけでも一瞬先は何が起こるかわからないのです。
しかし、今回は私は私の感性であえてこういった特別の宣言をしました。
そして最後の対戦相手の選定の時間がきました。
地元我孫子は勿論、東京からも続々と有力選手集まったメンバーは本当にすごいの一言に尽きます。
まずは2段の数の多さです。
そして、初段、茶帯も次期10人組手を控えた強者が揃います。
白帯はしていますが、自衛隊で4段を持つ実力者のNakagawa君もいますし、この中の誰を無作為に選出しても最強の軍団となりそうです。
人選は故障のない、組手可能な黒帯の上位から15人を選びました。
ニ段が8人も含まれる現時点では最強と言うに相応しい布陣でしょう。
1 Tokiwa初段
2 Karakida初段
3 Ando初段
4 Watanabe(レスラー)初段
5 Ozaki初段
6 Yanagi初段
7 Sonoda(T) 初段
8 Ikeda二段
9 Nito(兄)二段
10 Kamioka(アビ)二段
11 Susuki(R)二段
12 Kitajima二段
13 Kawabe二段
14 Hayashi(パオ)二段
15 Okimura二段
一言、壮観以外のなにものでもありません。
この中の初段は今年2段の推薦を受けているものが3人も含まれていますし、そうでない初段もその多くが次期2段候補の強者ぞろいです。
そして2段の中には今年3段に挑戦するものが2名も居るのです。
こうしてメンバーが揃い、私の15人組み手開始の宣伝が異様な緊張感の中で響きました。
健康に関しての細かい配慮をしましたが、組手においては一切の手抜き、手加減は不要という私の一言で第一試合が始まりました。
つづく