Suematu君は身長160Cmという小柄な体ながら、入門以来殆ど皆勤に近い熱心さで地道に稽古を重ね、ついに10人組手に挑戦できる資格を得ました。
そして平成17年の春の昇段審査において身長180Cm、190Cmという巨漢の黒帯を相手に10人組手を達成しました。
終盤は大変苦しい組手が続きましたが大きな相手には真正面から正々堂々と正攻法で立ち向かいこうした結果を残しました。
空手の醍醐味である「小よく大を制す」を実証してくれた功績はすばらしいものがあります。
これはその日にもらったメールですが、本人の承諾を得てここに公開させてもらうことにしました。
小柄な方で稽古を続けている者たちへの大きなエールにもなると思います。
Suematu 初段
千葉県在住
工業デザイナー
平成17年2月16日
世田谷道場のSuematuです。
今回は10人組手に挑戦させていただき、ありがとうございました。
新年会の時にもお話しましたように、今回の昇段審査は真剣に辞退を考えるほど、迷いの多いものでした。
今の自分の実力は、とても10人組手に挑戦できるレベルではない、と思っていたからです。
しかし、webサイトの「普段と同じことを淡々と行えば良い」という会長の言葉を読んで、何か自分が変に気負っていることに気がつきました。
「ちゃんとした、かっこいい10人組手をしないといけない」とでも思っていたようです。
恥ずかしい組手なら、いつもの稽古で皆の前でイヤほど披露しているのに。
それでも不安は尽きませんでしたが、こんな自分でも「九州男児の端くれ」、当たって砕けろの気持ちで、審査を受ける決心がつきました。
親から受け継いだ九州男児の血、ということで思いを巡らすと、そういえば祖父達は戦争に行ったはずだし、いつの時代かは知りませんがうちのご先祖様は意地を貫き通し皆の代表で直訴して打ち首になった、なんて話を思い出しました。
「そんな先代の命懸けの境遇にくらべたら、10人組手は失敗したところで死ぬわけでもないし・・・・」と自分に言い聞かせて、緊張をほぐしたりもしました。
今回の組手審査では、以前に会長から話のあった「負けない戦い方をすること」を心掛けました。
ダウンはしない、致命的な攻撃をもらわない、最後の力を温存しておく、などのことを頭に置いて、とにかく相手の攻撃をよく見て受けて、スタミナを無駄に消耗させないよう気をつけていましたが、それを意識しすぎたのか、結果的には手数の少ない、終始消極的な組手になってしまいました。
そればかりか受けも不十分で、もらってはいけない上段蹴りを何発ももらってしまい、顔面は寸止されていたのでその点のダメージこそないですが、勝負としては惨敗でした。
大柄な相手に対しては、小さい体を活かした至近距離からの回し蹴りや前蹴りを考えていましたが、終盤は体力の消耗でまったく技が出せなくなってしまいました。
何とか最後まで立ってはいられましたが、内容的にはとても完遂とは言い難いものだったと思います。
組手が終わって休憩している時、情けなさのあまり、急に涙が溢れてきました。
白状しますと、濡れタオルで顔を冷やすふりをして、しばらく泣いていました。
(こんなに涙が出たのは久しぶりです)
審査の中でも最大の関門である10人組手をこんな形で終わらせてしまい、後悔の念は尽きませんが、本当の稽古はこれからというふうに考えて、少しでも帯に近づけるように稽古を続けていきたいと思います。
でも、審査が終わった後にみんなから「おめでとう!」とか、お世辞でも「いい組手でしたね」などと声をかけられた時は、素直に嬉しかったです。
いつもは翌日の仕事の事を考えてすぐに帰宅するのですが、今日だけは(明日は午前半休にしてますので)数人と飲みに行きました。
年齢も職業もばらばらなのに、こんなに気兼ねなく付き合える「いい仲間」ができて、この点でも「現空研に入ってよかった!」と心底感じました。
・・・当分やめられそうもありません。
今後ともご指導よろしくお願い致します。
(酔いの勢いを借りての長文、失礼しました)