ヒット カウンタ

他流派大会へのチャレンジ その1

平成17年1月16日他流派の主催する競技会に現空研の会員3名が参加させていただいた。
この大会は中国武術の散打の大会である。

しかし、武術を志す者ならジャンルを問わず参加可能ということで日本武道の選手でも受け入れるという懐の深い大会である。
ルールは面着用で顔面直接コンタクトを許している。

また、肘、膝蹴り、立ち関節技、投げも許容されている。
現空研会員のIke君が以前から個人エントリーで参加しており、今回は私の承諾を得て現空研の若手二人を誘って参加することになったものである。

参加者の顔ぶれは散打以外では空手、日本拳法、少林寺拳法、キックボクシング等多彩であるが運営は友好的なものである。

現空研は稽古は危険防止の観点から顔面は寸止めで試合を行っている。
しかし、その他は防具着用のフルコンタクトであること、投げや関節も対応しているということで共通点も多い。

現空研は武道空手を標榜しており、競技空手に関しては従来よりあまり重点をおいてなかった。
しかし、会員の中には対外的な試合に出てみたいという希望もあり、また最近日本空手協会の方々との合同稽古など異なったルールで研鑚を積んでこられた方々との試合などでこうした競技会に参加することに関しての意義も再考してもよい機運が高まってきているのも事実である。

また会員の中にはボクシングやキックボクシングなどの経験者もおり、こうした顔面コンタクトの試合に慣れている者がいる事も追い風となった。
しかし現空研の本流は社会人や学生が生涯続けられる空手というものなので、こうした顔面をガンガン殴り合うといった形式は、私は本来の目的にはそぐわない点もあるので、これを恒常的に取り入れていくつもりはない。

しかし、武道は本来素面、素手で当然顔面ありが前提であり、寸止めは危険防止のための方便であることは間違いない。
また、現空研では常に顔面を意識した基本稽古を行っている。

したがって、普段の基本がキチンとできていれば如何なるルールにも対応できるはずである。
また対応できなければ真の武道とは言えない。

それで、今回のようなケースはあくまで個人が希望する場合に限ってということで、顔面ありの稽古も行い、こうした大会に参加するための準備もした。
特に、現空研の乱撃は、顔面への攻撃が主体であり、ボクシングとはまた違った観点から破壊力のある攻撃方法を追及している。
また、カウンターやスウェー、ダッキングといったテクニックも日常的な稽古メニューに入っている。

私はルールはかなり異なるものの、十分対応可能な範囲であると判断し参加を許可した。
試合の結果は、いろいろ課題もあったが、総じて満足のいくものであった。

参加経験のあるIke君は、対戦相手も大変レベルが高い硬式空手四段の選手が対戦相手だった。
初参加のNito兄弟はそれぞれ少林寺拳法の選手が対戦相手となった。

ここでは、そのビデオから、特に技術的な観点から、試合の一部を解説してみたい。
特に現空研の諸君は、普段の基本の稽古を思い出しながら勉強してほしい。

最初はNito(弟)である。
Nito(弟)はまだ、3級(緑帯)であるが、天性のバネと運動神経の良さでぐんぐん実力をつけている若者だ。
体は小さいのだがそのファイティングスピリッツはすばらしいものを持っている。

また大変稽古熱心で性格も素直であり、教えた事を真綿に水が吸収するがごとく自分のものにしていく。
合宿のときは私の愚息と悪ふざけが過ぎたので二人にカツを入れた事もあったが性格は明るく全てに前向きの所は高く評価できる。

今回のチャレンジに当たっては、左右の動きで接近戦に持ち込み、自分の間合いを取れたら休まず左右の連打を出すこと、またこれは皆に指導したのだが乱撃におけるカウンターの特訓を行った。(特に今回に限らずいつも言っている事だが)
また、世田谷道場では顔面ありの他流派出身のKoji君、我孫子道場ではプロボクシングライセンサーのIko君と面を付けての顔面コンタクトの稽古を行い勘を養わせた。

そして全ての道場で顔面有りの稽古希望者と実戦的な稽古も行った。
また、この希望者の数が多くて、次から次へと対戦者が現れ毎回熱気のこもった稽古ができた。

さて、今回の対戦であるが、その中から一試合を分析してみよう。
この対戦者の方は少林寺拳法二段である。

Nito(弟)より一回り大きいがどちらかといえば小柄に属するタイプである。
しかし動きは軽快で突き、蹴りともにバランスのとれた選手であった。

特に相手の動きに対応する反射神経は鋭いものがあり、上段回し蹴をきれいにきめるシーンも展開された。
ただ、頭を左右に振って接近し、自分き間合いになれば左右の鋭い連撃を繰り出すNito(弟)のパターンは恐らく初めての経験ではなかったのだろうか。
一発目は避けても次々に繰り出す連打には手を焼いていたようだ。

結果的にはNito(弟)が多くのポイントを取って勝利を得た。
特に効果的だったのは相手の上段突きを外側に頭を振ってかわし、カウンターの上段突きを入れるパターンだ。

これは現空研の乱撃稽古のパターンそのものであり、初めての対戦者はなかなかかわせない。
しかし、この攻撃パターンはボクサーが相手であったなら簡単にはいかない事も承知しておかなければならない。


はじめ。Nito(弟):黒 対戦者:赤

次の連続写真はNito(弟)のカウンターが決まった瞬間を捉えたものである。

 
@相手の右上段を先の先で感知し攻撃体勢に入る。 A頭は左に振り始める

 
B相手の突きは紙一重で外側に外される。 Cノーガードの顎に右正拳が入る。



D腰の入った正拳が顔面を直撃。


Nito(弟)の中段前蹴りを赤の選手が下がりながら下段払いで防いだところ。

 
@自分の間合いで真横からのカギ打ち   A恐らく赤の選手はこの攻撃は見えていない。


Bノーガードの状態でカギ打ちがヒット

 

次のシーンはNito(弟)が連打のため左ガードが下がったところを回し蹴のカウンターを決められたもの。
赤の選手は極めて接近した距離(正拳が触れる距離)から回し蹴を放っている。
しかも膝が先行した溜めの効いた回し蹴だ。これを見てもこの選手のレベルの高さが分かる。

 
@Nito(弟)の右上段突をかわしながら赤選手は右の回し蹴を放つ。
ANito(弟)ノーガードになった顔面に回し蹴をもらう。

 
Nito(弟)の膝蹴り攻撃。

 
@赤選手のジャブ気味の左を右上段内受でさばく。 A続けて赤選手の右上段を頭を振ってかわしながら右中段突きを放つ。

 
Bそのまま攻撃の手を緩めず、左からアッパーカット気味の上段突きを放つ。
C赤選手顔面への直撃を受けたまらず体勢を崩す。


Nito(弟)の投げ

 
@試合終了、お互いに礼。           B互いの健闘を称え合う。

試合はこうしてNito(弟)がポイントで優勢を取り勝利した。
赤の選手は突き、蹴りともバランスの取れた実力者であったがこうした現空研式の接近しての連打に慣れてなかったようであり、不覚をとったものと思われる。しかし、蹴りのタイミングはすばらしいものがあり、ポイントを取った上段の回し蹴りはあと少し腰が入っていればダウンにつながったかもしれない程きれいに決まっていた。
こうして見ると勝負は紙一重の差で明暗が分かれるものであることが分かる。
Nito(弟)は、もう一試合行ったがこれにも勝利し、今大会で唯一の最優秀選手賞をいただいた。

今回での課題はもう少し脱力して緩急を付けた攻撃を行うこと、突きだけに頼らず蹴りとのバランスを考えることなどがある。
しかしまだ3級という浅い経験を考慮すると最上の出来といっても言い過ぎではあるまい。

これで慢心することなく、更に稽古に打ち込んでより上を目指してこれからもがんばってもらいたい。

つづく

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