ヒット カウンタ

サプリメントの摂取について


はじめまして。いつも楽しく拝見させていただいております。
私は関西の方で総合、散打を中心に研究しているものです。

21歳 女ですが、将来プロの挌闘家になることも視野に入れて本格的に学ばせていただいております。
今回先生にぜひともアドバイスをいただきたくメールさせていただきました。
サプリメント類の使用について。とくにプロテイン、アミノ酸についての先生のお考えをお聞かせいただけますでしょうか?

私は筋肉を効率よくつけるために現在は○○○○(アミノ酸飲料)を就寝前と練習後 ウェイトトレーニングの後に摂取しています。
サプリメントに頼らず、必要とするたんぱく質を食事だけで補おうと努力したのですが、もともと小食なもので、この方法ではすぐに消化不良でダウンしました。

また女性なので食事で補おうとすると、たんぱく質と同時に大変脂質が付きやすく、断念しました。
今はマルチビタミンとアミノ酸の二本立てでやっていこうかなと考えているのですが。

基本的に先生はサプリメント類に対してどのようにお考えでしょうか?
また摂取に関するアドバイスをいただけますでしょうか?

どうぞお願いいたします。

 

格闘技で大切な要素は「技」や「精神力」といったものですが、それを根本的に支える体力という視点を外せばそれは不完全なものになってしまいます。

日本は古来より武道だけに限らず精神主義にかたよるきらいがあります。
現在はかなり是正されてはいますが、欧米に比べるとまだまだ体作りという点に関しては感心が薄いです。

プロ格闘技の世界では、精神論だけでは対処できないという現実を突きつけられますので以前と比べると随分関心は高まってはいるようです。

フルコンタクトの空手やいわゆるガチンコの勝負を数多くやれば、基礎体力の重要性というものはいやという程身にしみます。
逆にこういう体験がショックになって体力第一主義になってしまう人もいるのですが、これはこれで正しい認識とは言えません。

少々の体力の差は凌駕してしまうのが武道の面白い所なのです。

しかし、同じ技術、精神力を持つ者同士が戦った場合は体力の差は大きな要素となります。
自分という一定の条件で最強を目指すのなら、技術、精神力、体力といった全ての面での向上を目指すべきです。

今回は、体力の面、その中で体作りの一要素であるサプリメントの関するご質問です。
サプリメントに関しては武道界は他のスポーツの分野に比べると関心は薄く、伝統的に精神面に偏っていたきらいがあります。

しかし、最近はプロの格闘技の世界や他スポーツの影響を受け、随分関心の度合いは高まってきたと思います。
インターネットでも多くの情報が流れていますので、そうした方面の知識をお持ちの方も少なくありません。

ただ、こうしたサプリメントや健康食品といったものは、公正な第三者的機関による信頼できるデータがあまりに少なく、商業主義的な匂いのするものが少なくありません。

ドーピング問題にひっかかりそうな本格的な薬物から毒にも薬にもならないまがい物、ある種の効果はあるかもしれないがそれをあまりにも大げさに宣伝したもの等等。

一目見て分かるような怪しげなコマーシャルなら、素人でもおおよその判断はつきます(ダイエット食品などに多い)が、大手の食品メーカーや製薬会社などが製造あるいは販売を行っているものは、有害なものはまず無いと思います。
しかし、その効能に関してはその宣伝内容をそのまま信ずるのは早計だというのが私のスタンスです。

トレーニングに関する雑誌等を見ますと、毎月毎月これでもかと言うほどこうしたサプリメントの類のコマーシャルや紹介記事で溢れています。
その全てが「画期的」なものばかりです。
もし図書館に行かれることがあれば10年位前からのこの手の雑誌や論文を時系列にご覧下さい。

こんなに長い間「画期的」なサプリメントが出現しつづけた事にある種の感動(?)を覚えることでしょう。

トレーニングジムなどのインストラクターで、ある特定のサプリメントやトレーニング方法を熱心に薦める人がいます。
彼らは、商売の上で特定の商品をすすめなければならない立場の人もいますが、それだけではありません。
彼ら自身がある種の記事や論文、そして自分自身の体験から特定のサプリメントの狂信的な信者になっているケースもあるのです。

特に自分自身の体験に基づくものは自分が生きた証人ですから絶対的な自信を持っています。
彼らの言葉に促されて特定のサプリメントの信者になる人も少なくありません。

しかし、こうしたプロのアスリート達は、こうしたサプリメント以外にも食事は気をつけていますし、何より人並みはずれた精神力で長期のトレーニングを継続してきた人なのです。
たまたま、そのサプリメントが気に入ってそれを摂取していたとしても、そのサプリメントの効能がこれだけで証明されたわけではありません。

こういったものは大掛りな検査を正しい手法によって行い何らかの有意差(統計的に意味のある差)が認められなければ本当の効能は証明されないのです。
たまたま手にしたサプリメントで自分に良い結果が出たとしても、それだけをもって万人に薦める根拠とは成し得ません。

ちゃんとしたメーカーのサプリメントは、当然こうした統計的な検証はある程度は行っているでしょう。
しかし、私はこれでもまだ懐疑的に思っている面があるのです。

それはやはり、過去の大量の記事や文献を時系列に眺めてみると誰もが感じることです。
これだけ多くの「大発見」や今世紀最大の発明が矢継ぎ早にでて来て、それが瞬く間に、消えていくという事実です。

そして、その発見は時代、時代で一定の傾向というか流行が感じられるのです。
ある時代は「ビタミン」全盛でした。
総合ビタミン剤というものが大流行しました。

そして、ビタミンCの大量摂取からはじまり、ビタミンEが脚光を浴びました。
またある時代ではミネラル(鉱物)が流行しました。
プロテイン(たんぱく質)も初期のただプロテインを摂るといったレベルから、プロテインの種類などが議論されるようになりました。

アミノ酸に関しても、昔から様々な角度から論じられています。
こうしたアスリート向けのサプリメントだけではなく、ガンに効く「きのこ」やら、海の底から取った水など、様々な類の健康食品が雑誌やテレビなどで宣伝されます。

有名なテレビ番組で取り上げた健康食品や野菜などがその日のうちに売り切れになるなどの現象はやはり異常としか思えません。    

一方サプリメントの類を極端に嫌う人たちがいます。
超自然派とでも言いましょうか、最近増えてきたある種の狂信的な自然主義者たちです。

産業廃棄物などの嫌疑から始まり、近代科学が作った物を汚物のように嫌う人たちです。
食品添加物などに異常に過敏で、食品だけでなく、家具や壁、床、塗料なども化学薬品を使ったものは全て拒否します。

とにかく自然が一番という宗教的な信念に固まった人たちです。
確かに、排気ガスや医薬品の過剰使用、様々な化学有害物質が人々の健康を害しているのは間違いありませんし、こうした人工物による自然破壊は現在だけでなく、将来の社会における影響も考えて本当に真剣に取り組むべき課題ではあります。

しかし、現在これだけ多くの人が病気を克服して有史以来最高の平均寿命を延ばし続けているのは、現代文明、科学の発展、なかでも多くの化学物質のカによるものです。

つい最近テレビで紹介されていましたが、中世の平均寿命は20歳台だったという話ですし、ローマ時代の平均寿命は18歳だったという話を聞いたこともあります。

これは、排気ガスも、ダイオキシンもその他の化学的な有害物質は何もない、超健康的な時代でのことです。
全ての近代的なものを否定して自然回帰を唱える人たちはまずこうした客観的な事実を認識しなければいけません。
いや、こんな事は分かっている、それでも現代文明を否定するということであれば、それはもう宗教の世界ということになりますからここでの議論ではなくなります。

サプリメントの話に戻りますが、ただ普通に暮らして行くということであれば、ことさらサプリンメント等の摂取は必要ないと思います。
しかし、武道家として自分の遺伝的な限界の極限まで自分の能力を高めようと思ったら、通常の食事だけでは足りません。
いや、足りるかもしれませんが、あらゆる栄養素を自然食品だけから十分に摂取しようと思ったら、大変な費用と労力を要することになるでしょう。

良質なプロテインやアミノ酸を余分な脂肪を取り除いた形で摂取しようと思ったら、普通なら食べられる美味しい所をどんどん廃棄していかなければならないでしょう。

こんな事を長期にわたって続けられる人は本当に限られた一部の人たちだけです。
サプリメントは、本来なら贅沢に自然食品で摂りたいものを経済的な観点、その他総合的な見地から合理的な判断で補助的に摂取せざるを得ない物なのです。

それ以外に、もう少しプラス面を考えると、自然食品より消化しやすい形や吸収しやすい形状に作られたり、保存性や携帯性(ポータビリティー)に優れている点もあるでしょう。

私自身も食事以外で総合ビタミンやプロテイン、アミノ酸等は補助的に摂取しています。
体作りの基本はたんぱく質の摂取とそれの体の中でも再合成ということになります。

それをいかにスムーズに合理的にできるように食事、運動、休息、睡眠といった要素をシステムとして構築できるかが焦点になるのです。

多くのメーカーから毎月のように登場する個々のサプリメントに関しての詳細なデータを常に更新していくという事はよほど時間がなければ不可能なことですし必要もないと思います。
体作りの大まかな原則を把握していれば、個々の製品に関してはそのセールストークの妥当性はある程度の判断はつきます。

後はシステムとして総合的に自分を捉えて、目的に応じてサプリメントを取捨選択していくということでしょう。
長く続けるということであればそのコストということも重要なファクターになります。

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