園田先生
フランスの○○○○です。
私の質問に、丁寧で温かい御助言を下さり、本当にありがとうございました。
大変力づけられました!
今回のメールは、お礼方々、先生の御助言に対する感想、フランスでの空手修業の所感、です。ーー私の単なる雑話として、お読み流し下されば幸いです。
先生は、空手を語学と比較して論じていらっしゃいましたが、本当におっしゃる通りだと思いました。私も、常々、ダンスを語学学習と結びつけて考えていたからです。
子供は見様見真似で語学を習得しますが、大人は、理屈=文法を理解しなければ、違う言語を覚えにくいものです。ところで、ダンスにも「型」(基本)があり、これは文法と同じだなあ、と、思っていたのです。
どういう理屈でどの筋肉や関節が動くのか、この動きにどういう意味があるのか、次の動きをするために、どうしてこの足に重心がかかっていなければならないのか、など、頭で分かっていた方が、ある動きを習得しやすいものです。
その文法(理屈)が分かった上で、語彙や構文(動きやそのパターン)を増やし、会話や作文や詩(表現)に繋がる、と。
でも、ダンスにせよ空手にせよ、身体技術は、やはり、動いているうちに身体で分かってくる・身体でしか分からないもので(あ、語学もそうですね)、先生のおっしゃる通り「分からないからと言って何もしないのではいけない」と、本当にそう思いました。
ただ、恐いのは、ダンスの場合、先ずは基本をみっちり仕込まれ、それが身について初めて「表現」という段階に進むよう指導されるのですが(勿論指導者にもよりますが)、通っている道場の場合、ずぶの初心者から、レベル・くせの違う様々な相手との自由組み手も同時に行われますので、正しい基本が身につかないうちに、自分自身に変なくせがついてしまうことだったのです。
これを解決する方法として、先生のおっしゃる通り、出来るだけ質問をする機会を見つけ、また、自分でも「理論」を研究してみようと思います。
そして、美しい動きの先輩を見つけて(道場はかなりの大人数で、先生は大忙しなので)、モデルにして真似ようと思います。
まあ、あまり深刻に考えず、とにかくやってみます(笑)。
でも、組み手には、確かに、思わぬ効用がありました。
ダンスで、2人で自由にアドリブをするということがあるのですが、このとき、相手の動静や呼吸を窺いながら、動きや移動を組み立てていく必要があります。
「自由に」と言っても、相手の存在を無視して自分勝手に動くのでは、「単に、2人の人間が同時に舞台上にいるだけ」となり、「デュエット」にはなりません。
また、アク(オーラ?)の強い相手ですと、気圧されてしまい、今度は適当に無視することができず、十分に動けなくなってしまいます。
相手と向かい合い、どういう技を繰り出すかその呼吸を読みながら、且つ直接相手の身体に触れ、相手の動きに合わせて自分の動きを変えていく組み手は、このデュエットの思わぬ良き鍛練法になっています。
やっぱり空手って、面白いですね!
・・・・・・・以下略・・・・・・・
前回質問を頂いた○○○○さんからお礼と感想のメールをいただきました。
その中に私を含めて空手を学ぶ人たちにとって大変参考になる記述がありましたのでご紹介させていただきます。
まず、空手とダンスという身体を動かす技術としての共通点を通しての共感は私もかなりあります。
それは、空手やダンスのように体で表現する技術はやってみないとわからない点が多くあるという事です。
「美しい動きの先輩を見つけて、モデルにして真似ようと思います。」というやり方は一見安易のようですが実は全ての学習の原点だと思います。
「学ぶ」という言葉の語源は「まねぶ」であって、優秀のお手本の真似をするということが学びの原点だということを高校生の時ぜんぜん勉強しなかった私に説教してくれた先生の言葉が今になってありがたく思い出されました。
次に最も興味深かったのはダンスで二人で自由にアドリブをする時の心理です。
通常のダンスを約束組手に例えるとアドリブで行うダンスは自由組手に相当することになります。
これはジャズでジャムセッション(複数の奏者のアドリブ演奏)をする時とも共通する状況ですが、常に相手を捉えていなければなりません。
空手の場合は純粋な戦いですが、ダンスやジャズであっても共同作業であると同時に火花をちらす戦いの要素もあります。
それはやっている当事者同士もそうですが、それを見ているギャラリーもそうした視点で捉えています。
空手、ダンス、ジャズで共通しているのは、リズムが大変重要であるという点です。
例えば絵画であれば、評価の対象は完成した成果物ですので、リアルタイムな時間の経過におけるリズムとかタイミングといった要素はありません。
殆どの学問や研究の類もそうでしょう。
一方、空手、ダンス、ジャズでは相対する他者と自分の時間経過の中でのやりとり、動作、そしてそのタイミングといったものが非常に重要な要素を秘めているのです。
例えば空手では、静止したサンドバックをズシーンと蹴れる足や、積み上げた瓦を粉々に粉砕できる拳を持っていても、動いている相手にその威力を発揮できない事には宝の持ち腐れになってしまいます。
いかに相手の動きとシンクロさせてあるいはリズムの裏を取って自分十分、相手不十分のタイミングで攻撃を行うかが重要なポイントであり、「技術」はこうしたタイミングを捉える能力が非常に大きなウェイトを占めています。
相手の出鼻に合わせて交差的に攻撃をしかけるいわゆるカウンターという技術があります。
これは分析的に言うと相手の動きのタイミングを捉えて一瞬の先読みをして攻撃をかける技です。
このように相手のタイミングを読み(感じ)その攻撃のリズムを一瞬外して自分の攻撃をするという、このカウンターはなかなか難しく初心者にはまずできません。
いろんなタイプ(それぞれ別のリズム感の持ち主)の人と数多くの組手を行うことによって体得されていくのです。
そういう意味では異なる種類の武道の人や同じ空手でも他流派の人と数多くの対戦をすることがこうしたリズム感を養う大きな糧となるのです。
○○○○さんの言われる「呼吸を読む能力」というのはまさこの事に該当するのだと思います。
ぜひこうした空手の技を自分のものにされ、それをダンスの鍛錬にも生かしていただければ思います。
空手って本当に面白いでしょう!!