いつもHPを興味深く拝見させて頂いてます。○○○○と申します。
東京在住でただいま大学2年です。
突然のメールを失礼します。
私は大学から寸止めの空手を始め、体育会空手部に所属しています(1年半ほどになります)
空手をはじめて、1年ほどで学連の黒帯を取る事ができました。
しかし一年半を通じて私は組手が苦手でした。
理由のひとつに技術の向上の実感が分からない、向上方法が明確でない(自分の中で)ということがあります。
基本や型では技の一つ一つに形やキレを意識をする事が、例えば突き時に脇のシメ、突き力が対象に当った反発が背中(膝、足)に抜けるといった『感覚』を通じて理解出来ます(もしくは出来た気になります)
しかし組手は部活の仲間と普段の稽古を通じて、どのように技術が向上したのか理解できません、実際に勝敗という形をとおしてもばらつきがあります。
そこで二つ質問があります。
一つ目はすごい曖昧なのですが、組手はどのような方法で技術を向上させていくのかということです。
私が普段している組手に対する練習は大学の稽古内のミット打ち、打ち込み、スパー、試合。個人練習に鏡の前でのシャドー、サンドバック打ち、仲間との打ち込み、フィジカル面の向上の為に筋トレ(メニューを組んでもらってます)などです。
シャドーやサンドバック打ちでは前拳やワンツーなどキメを意識してやってるつもりです。
一応、週六+αで練習してますが単純に練習量が少ないのかもしれません。
ただやっていて、この練習が技術の向上につながっているという実感が沸かないのです。
相変わらずキメが弱かったりポイントがとれなかったりします。
なにかここから始めるべきだという体系的なものはありませんか?
もうひとつは試合時の間合いについてです。
相手の攻撃の間合い、自分の攻撃の間合い、感覚的なものですがこの見極めに苦労しています。
極端な話をすればこちらの攻撃は全て届かなく相手の技は全て自分よりも早く打たれるような気分に陥ります。
私は身長168と小柄な方には入ります。
試合の最中自分の間合いに入って(結果として相手の間合いにも入って)前拳を打ったところでカウンター気味にでも入らない限り捌かれたりステップバックで下がられたりします。
そのあとのワンツーのツーでの上段、中段でポイントを取る技術はありません。
間合いの攻防、ステップを使って相手の間合い入ったり離れたりして攻撃の機をうかがう。
ここで私はまだなんとなく(つたないフェイントを混ぜたりもしますが)攻撃しています。
この場面で攻撃する、機、タイミングというものはどうすれば学ぶ事が出来るのでしょうか?
また私は攻撃すると時に目をつぶる癖がなかなか抜けなく損をしています。
まとまりのない文章ですが(なんか自信のなさであふれてますね)、なにかアドバイスをいただければと思っています。
失礼致します。
話を整理しますと。
質問者の方は大学の空手部で寸止めの空手を始め、現在は黒帯である。
しかし、組手が苦手である。
部活の仲間と比べても自分の技術の向上を感ずることができない。
具体的な質問点は以下の2点である。
組手の技術を向上させるにはどんな方法があるか。
試合の時の間合いの取り方の学習方法を知りたい。
といったことになると思います。
最近ある学校の学園祭で空手部の模範試合を見る機会がありました。
久しぶりに学生の空手の試合を観戦しました。
皆一生懸命で真面目に空手に取り組んでいる姿勢が感じられ良い印象は持ちました。
ただ空手だけに限りませんが部活のレベルというのは学校間の格差はかなりのものがあります。
もしレベルの高い活動をしている学校であれば、強い同輩や先輩も多く、より短期間で実力は向上しますが一方、仲間もレベルがどんどん上がっていきますので自分の向上を普段の稽古や組手でなかなか実感できないといった弊害もあります。
逆に、部員も少なく、厳しい指導者がいない場合は、回りがあまり向上しませんから、多少でも自分の実力が上がれば、組手なんかでも常に優位にたてますので一見凄く自分が強くなった気になります。
大学で初めて空手をやり始めた者にとって、空手の世界は学校の部活だけですから、自分の実力はもとよりここの環境自体のレベルといったものを客観的にはなかなか捉えることができません。
質問者の方は、稽古のメニューや頻度からいって決してレベルの低い学校ではないと推察されます。
したがって強力な仲間も多く、彼等と一緒に同じメニューで稽古していては中々自分の向上を自覚しにくいといったことがあるのではないでしょうか。
既に短期間で黒帯を許されるところまで行っているわけですから、まず自信を持つことです。
ただし、学校の部活であればほぼ同じような年齢、同じような環境で同じ稽古のメニューをこなすわけですから普通にやっていたのでは仲間のレベルから抜け出すことはよほど才能に恵まれていないかぎり容易ではありません。
社会人であれば、回りに空手をやっている人は激減しますから、回りとの競争というよりは自己との戦い、つまりいかに万難を配して稽古を継続するかといったことが大きな課題になります。
そして進歩の早さといったものは大して問題になりません。
社会人にとっては様々な制約から「稽古出来ない」という状況が頻発しますので継続する者が最後には勝つという構造になるのです。
しかし、学生であって、競技空手を目指すのであれば、当然観点が変わってきます。
限られた期間内で競技で良い成績をとるための方法論といった観点になるからです。
現空研は競技空手を目指している団体ではありませんから、競技空手に関する具体的で効率的なテクニックに関しては私は回答するに適した人間ではないと思いますが、せっかくのご質問ですから武道空手からの観点でいくつかの思い付く事をあげてみようと思います。
空手にかぎらないと思いますが何事かにチャレンジするためにはまず自分の力を客観的に知ることが大切です。
なるべく多くの人と組手をやってみます。
自分の流派内の戦いであっても、他の学校や道場を見学したり、もし可能であれば出稽古に行ってみます。
多くの異なる環境の人と対戦することで自分の力の概要がわかります。
次に指導者のアドバイスを注意深く分析します。
しかし良き選手必ずしも良き指導者とはかぎりません。
自分では試合に強く技も切れ、人格としても素晴らしくても、その人が自分の技や他人の欠点を正しく表現できるかどうかは私も含めて別の能力なのです。
したがって強い先輩や先生からのアドバイスはありがたく頂戴すべきですが、それを言葉だけで捉えず、その背後にある実体を探ってください。
先輩や先生が何か貴方の空手に注文をつけているとすれば、貴方の空手に明確な欠点があるからです。
しかし、言っている言葉は表現として適切がどうかはわかりません。
私も、言いたい事は山ほどあってもそれを適切な言葉に表現できず、そこで無理に言葉にはしてみたものの実体とは程遠い表現になって自分にイライラすることがあります。
それでももし同じアドバイスを何度も受けるということであれば、表現はどうあれ、上級者から見て明らかな欠点があることはほぼ間違いありませんから、自分に思いあたらなくてもその欠点を探求することが上達への近道です。
次に、客観的な力を把握するのには、測定可能なものを測定し、そして記録を取るということが大切です。
どんなスポーツ、武道でも基本的な身体能力を向上させないことには大きな進歩は望めません。
本格的な筋力トレーニングならなおさらですが、簡単な腕(拳)立て伏せやスクワット、懸垂といったものでもただ漫然とやるだけでなく、記録を取ります。
トレーニングの方法論は理屈をこねるだけでは屁の足しにもなりません。
記録をとることにより、成果を客観的に知ることができその方法の是非も自分で判断できるようになります。
例えば腕立てを連続で何回やれるか限界まで試行します。
それを日時とともに記録することです。
これによって少なくとも基礎体力の時間軸に対する向上の度合いは客観的に知ることができます。
以上述べた二点、
指導者のアドバイスの本質を探る
基礎体力の記録を取る
こうして知った客観的な自分像を出発点に自主トレも含めた稽古のプログラムを組み立てます。
そして得た結果をフィードバックさせて次の段階の稽古のプログラムを組み立てるといったサイクルをとればよいのです。
次に組手の技術向上に関する具体的なアドバイスですが、これは言葉で、しかもこうした短い文で表現することは難しいですが、心構えとしてはお伝えできることがあります。
それは空打ち(シャドー)やサンドバックを打つとき、漫然と打つのではなく、そこに相手の像をイメージとして必ず置くという点です。
相手のじゃまな手や足もイメージとして必ず存在させるようにします。
つまり、一人であたかも相手がいるようなシャドー空手(?)をするということです。
この相手のイメージをいつでも作れるようになれば、一人でも効率的な稽古ができるようになります。
イメージトレーニングともちょっと違います。
イメージによる実戦シミュレーショントレーニングとでも言えばよいのかな。
実はこれは相手がいる組手でも応用的な稽古方法があります。
私はたまに現空研の黒帯をつかまえてこういった稽古を行うことがあります。
次に間合いについてですが、これは自分の「気」をどのように制御するかが問題です。
例えば、同じ相手の攻撃を身を退けて避ける場合でも、「攻めの気」でいる下がり方と「守りの気」で下がる場合、全然相手に与える圧力が違ってきます。
下がるという動作は、通常は「守り」の行動です。進む動作は通常は「攻め」行動です。
したがって気持ちが押され気味の時はどうしても、守りの体制に入りやすくなりますから下がってしまうという行動になります。
しかし、相手はそうした弱気といったものは意識するしないにかかわらず本能的に敏感に感じ取るのです。
そうなると、相手は途端に飛び込みやすくなります。
こうなると、質問者の言う「こちらの攻撃は全て届かなく相手の技は全て自分よりも早く打たれるような気分」といった状況に陥ってしまうのです。
こうした状況を防ぐきわめて効果的な方法というか心構えがあります。
それは下がるときは「攻めの気」で、進むときは「守りの気」という心構えです。
つまり、逃げる気持ちで下がるのではなく、攻める気持ちで下がるのです。
具体的にはカウンターを狙うもよし、スピード勝負の相打ち狙いでも構いません。
実際にこうした反撃をするしないというより、常に勇気を持ってこうした心情で相手と対峙するということです。
逆に進む時は、防御の心構えです。
こうした通常とは逆の心情、あるいは心構えを持つことによって、動きに(自分でも気が付かないかもしれない)微妙な変化が生じ、それが相手への見えないプレッシャーとなります。
一旦こうなると「こちらの攻撃は全て届き相手の技は届かないかあるいは罠にはまるようによく見える気分」になります。
この方法論というか気構えは、現空研のフルコンタクト組手における接近戦の理論の一部ですが、原理は寸止めの空手にも十分応用可能だと思います。
以上参考にできる点があれば幸いです。
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