初めてお便りさせていただきます。
いつも楽しく現空研サイトを見させていただいており、現空研での合理的な考え方、効率的な練習体系、理念等に共感するとともに日々の稽古に参考させていただいております。
今日はひとつ質問がございます。
私は空手歴約2年の30台後半の男性で、身長は173C,体重は57KGであり、空手道場での練習生の中でははもっとも軽い部類に属します。
フルコン組み手をする際には怪我に注意しているのですが、時折、蹴り(回し蹴り、前蹴り)、またはフック系の突きをまともにもらう事があります。
結果、いままでに何度も脇腹の肋骨が折れることがありました。
一度骨折するとやはり1ヶ月以上は練習を制限することとなり、練習効率がとても悪い状況となります。また、実際、戦い・試合では胸に攻撃をもらうことは多々あり、いちいち肋骨が折れていては、、、、という気持ちです。
肋骨の周りは筋肉がつきにくく、また個人的には骨も太く頑丈に生まれついてないのが災いしているように思えます。
この肋骨骨折を防ぐためにどうすればよいか、アドバイスをいただけないでしょうか? 構え、インパクトの薄め方など、技術的な面、また肋骨の強度を高めるトレーニングなどありましたら、お教え願えないでしょうか?
宜しくお願いいたします。
○○ ○○
(Eメールでは入ってくるメッセージの日本語は読めますが、こちらから直接打つと受け取り側で字化けしますので、このワードのファイルを添付させていただいております。)
メールアドレスから類推するとイギリス在住の方でしょうか。
英文のメールにいきなり "Please open the attached file"
とあって.添付ファイルがくっついているので、最初はウィルスメールかと思いました。
添付ァイルの中身は日本語だったのでまたびっくりしました。
お手紙の内容から類推するとフルコン系のそれもかなりハードな稽古を行う道場のようですね。
肋骨の骨折はフルコン系の空手では最もポピュラーな怪我です。
というより、空手に限らず他のスポーツでも頻繁に起きています。
ゴルフのスイングだけで肋骨を骨折したというような話を聞いたこともあります。
何らかの運動をやっている殆どの人が一度は経験していると思います。
しかし、質問者の方のように何度もとなると、ちょっと問題ですね。
確かに骨格には個人差があり、生まれつき丈夫な人もあればきゃしゃな方もいます。
丈夫な人はたいしたトレーニングをしてなくても少々の打撃では骨折しません。
一方、きしゃな人は、えっと思うような軽い打撃でも骨折を起こすことがあります。
しかし、どんなに弱い人でも長期間空手の稽古を積めば見違えるような体になることは私は多くの実例を見て知っています。
空手の上級者は、めったに骨折しなくなります。
それは、稽古や付随的なトレーニングで骨格が丈夫になり筋肉が付いてそれが鎧のような役目をはたしていることもありますが、もうひとつは打撃に対してその威力を殺す体さばきができるようになっていることも大きな要因になっています。
この打撃に対しての体さばきはフルコン系の空手ならではの技術です。
実際にフルパワーで打ち合う経験を何年も行うことで、体が打撃に対して上手に反応するようになってくるのです。
打撃に対する体の動き自体がダンパーやショックアブソーバのような役割をはたし、ショックを吸収するようになってきます。
こればかりは、実際の稽古の量が物を言う世界です。
しかし、同じように稽古をしても原理を知っているのと知らないのでは効率が全然違います。
まずはその原理を理解しておくことです。
力は時間をかけて受けてやると弱くなるという原理があります。
もちろん空手の場合の時間はコンマ以下の単位です。
同じ蹴りや突きでも引き加減(つまり受ける時間を長くするように)受けてやるとパワーを殺しやすいのです。
理科系の人だと、運動量と力積の概念を思い出すとピンとくると思います。
もう一つは、人間の運動神経の限界を利用する方法です。
打つ目的が静止しているのが打つ側の人間にとって一番パワーを発揮できる状況です。
これが動く目標となると、もてるパワーをタイミングよくそれに合わせることは急に難しくなってきます。
ボクシングの技術でダッキングとかウエービングといって体をかがめたり揺らす防御のテクニックがありますが、これはまさにこの原理を端的に利用したものといえるでしょう。
守る側で言えば、打撃を受けるタイミングで静止しないということです。
現空研では、初心者の方でも割と早い時期に防具をつけてフルパワーで殴り合うといった経験を一度はさせるようにしています。
ここでいろんな事を体験していただくわけですが、その目的の一つに動く目標をフルパワーで殴ることの想像以上の難しさ、それと動いていれば、致命的な打撃(衝撃)を意外に受けないものだということを肌で感じてもらう事があります。
これは、防具がなければなかなか実験できないことです。
防具を着ける事でお互いの安全に関する安心感のもと遠慮ない殴り合いが可能になるのです。
これは寸止めだけの世界では決して味合う事のできない体験となります。
もし、こうした体験をしたことがなければ、そして現在の道場でこうした防具を突けて打ち合う稽古が可能であればぜひお試しください。
大切なことは渾身の力を振り絞っての打撃の応酬をやってみるということです。(それを安全に)
効かす突き、合理的な受けやさばきというものの必要性を心底感ずることができます。
そして、動きの中での合理的な技の受け方というものを体で知ることができます。
一旦こうした体験を十分積んでおくと、例えば相手の打撃を受けたりさばくことができない状況に陥っても、体が損害を最小限に食い止めるような動きを自然にしてくれるようになるのです。
こうなってくると骨折その他の障害を受けることは激減します。
一方こうした稽古を積むと同時に、体自体を鍛えるということも大切なことです。
私は、肋骨や腹部の強化として、通常の腹筋運動の他、懸垂を特にお薦めいたします。
懸垂は、前腕(握力)や上腕筋の他、肋骨回りの大胸筋や腹筋も十分鍛えてくれます。
あと、三戦の姿勢で息吹を繰り返すのも大変効果のあるトレーニングだと思います。
筋力トレーニングは自分が鍛えようと思っている個所をなるべく具体的かつ鮮明に意識して行うことが大切です。
なお、組手における受け方は内受けをいかに実戦的な状況で自由に使えるようになるかということが上級を目指すものにとって大切なポイントだと思っています。
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