ヒット カウンタ

伝統空手のスタイルでフルコンに対応できるか

更新 209/05/30


園田先生はじめまして。 自分は神戸に住んでいる「○○○」といいます、年は22歳です。
現空研のホームページはとても参考になりいつも読ませていただいています。
今回は相談したいことがあり、メールさせていただきました。

自分はこれまで糸東流で8年間、空手をやってきました。しかし引越しをきっかけに色々な空手を
体験してみたいと思い、フルコンの他流に入門し一から始めようと決めました。

そして現在は入門し3ヶ月目になります。まだまだ以前との違いにとまどっています。

そんななか先日、「試合に出てみないか」と言われました。
その試合のルールはオープンフィンガーグローブとヘッドギアをつけての上段突き、関節技、投げありの
総合ルールです。 自分がこれまで経験したことがないルールですし、戦い方がいまいちイメージが
沸きません。 しかし試合は○月○○日と言われたのであと1ヶ月ほどしかありません。

試合は体重無差別で行われます。
自分は体格も華奢(172cm55`)なので付け焼刃的なフルコンスタイルで戦うより
今までどおり遠間から上段狙いで飛ぶこむ方がいいのかな?など色々考えてしまいます。

ちなみに道場での組手は顔面なしのフルコンとグローブをつけての新空手のような組手しか
したことが無く試合ルールでの組手はまだしたことがないです。

今の練習は道場での練習が週1回で自宅では鏡を見ながら基本と新しく覚えたフックやアッパーの
反復 あとは拳立て、腹筋を150回(50回を3セット)ずつぐらいです。
試合までの残りの期間どんなことを意識して練習すればいいのでしょうか?また戦い方として
これまでのスタイルでいくのが正しいのか、通用するのでしょうか(グローブではある程度通用しましたが
フルコンでは圧力に負けてさっぱりでした)? 

いきなりの質問で申し訳ありません。

追伸 

いつか先生に直接指導を受けてみたいと強く思っています。近くに行くようなことがあれば、顔を
出させてもらってもよろしいでしょうか? 

質問を整理しますと、

  1. 伝統空手(糸東流)の経験者(おそらく有段者)だけれど、最近フルコン空手をはじめた。

  2. フルコン(総合?)の試合にでてみないかと誘われた。

  3. 試合にでる場合今まで(伝統空手)のテクニックで通用するのか否か。

ということになると思います。
これは簡単には答えられない問題です。
また、私が必ずしもこの問題に回答するに適した人間ではないと思いますが、個人的な一見解といったレベルでお答えしてみたいと思います。

まず、伝統空手といっても個人差がかなりあります。

極真会館のオープントーナメントの初期は各流派(当然伝統空手)の多くの選手が参加していました。
彼らは当然今までに身につけた各流派の流儀で戦います。

そうした中でも、異なるルールにもかかわらず善戦する選手もあれば、勝手の違いから本来の力を出せないまま敗北する選手もいました。
おそらく、それぞれの流派での試合で強い選手がかならずしもフルコンの試合でも同じ結果を残せたというわけではなかったのではないでしょうか。

普段から実戦を想定してより現実的な戦い方を考慮していた選手が良い結果を残せたようなきがします。
寸止めを長くやっていた選手がはじめてフルコンの組手を行ったとき感ずるいくつかの共通の感想があります。

主なものを列記しますと、

などです。
特に拳による顔面攻撃無しというルールだと、突きはボディーに効かせなければ意味ないことになります。
寸止めで、間違って入った時あれほど効いた中段の突きがフルコンルールだと殆ど効かないことに多くの経験者は愕然とするはずです。

理由は二つ考えられます。
一つはフルコンルールで長く戦っている選手は、トレーニングと慣れによってボディーが丈夫になっており効きづらくなっている。
もう一つは顔面無しということなので突きに対する防御を中段に集中することができ、当てられた場合でもジャストミートしにくくなっている。
一方当てるほうもフルコンの経験がないと、拳や腕が実際の衝撃に耐えられる程鍛えられていない、ということもあります。
特に手首が弱い選手が目立ちます。

寸止めの上級者は突き自体のスピードや威力はありますが、自分のパワーに自分の拳が負けてしまうことがあるのです。
拳や手首の弱さは鍛えることで克服できます。

次に効かせる突き方ですが、これは文章で説明することはとても難しいです。
サンドバックをとにかく回数多く突いて、実際に当てるという感触を刷り込む必要があります。

サンドバックよりもっと実戦的な稽古は人間を突くことです。
親しい仲間に厚めの防具を付けてもらって思いっきり突かせてもらうのも良い稽古になります。

蹴りも同じです。
前蹴りで効かせるためには、腰で押し込む動きが必要になります。

金的無しの場合はキックボクシングのように上体をそらせた体勢が試合では通用します。
この体制ではボディーへの前蹴りは威力が半減します。

実はこの体制は金的を蹴ってください、という体勢なのですが、普通試合では金的は禁止されていますから、蹴るわけにはいきません。

ボクサーや組技系の選手には前傾姿勢がホームポジションの人がいます。
あるいはタックルなどにくる瞬間前傾になることがあります。

ボディーへの前蹴りが最も威力を発揮する瞬間です。
前傾姿勢の場合は、相手にもよりますが、受けられようがどうされようがいさい構わずフルパワーで蹴込むという戦法が結構効果を発揮することがあります。

この場合も前提として自分の脛や上足底が十分鍛えこまれていることが条件です。
くみ技系の選手は蹴られながらも足を取りにくることがありますので、蹴り自体に一撃で相手を倒すくらいの威力がないと逆に墓穴を掘る結果もありえるからです。

さて、質問者の方はもう一つ重要なポイントがありました。
試合がすぐ間近に迫っているという点です。

しかも顔面あり、掴み、投げもありというルールのようです。
伝統空手の試合形式とは最も対極的なルールです。

短期間での対処ということであるなら、伝統空手の最も威力のある顔面への突きに徹した作戦が有効ではないでしょうか。
距離を保って射程内に入ったら威力のある突きを一発だけでなく連撃でたたみかけるといった戦法も一つの選択肢だと思います。

失敗した場合相手が組技の得意な選手の場合は裏をとられる危険性もありますが、飛び込こんでの正拳から鍵突きなどのコンビネーション等は決まった場合は威力を発揮すると思います。

以上私の個人的な見解を述べてみました。
実際には出場する選手のレベルや体格それに細かいルールの違いにより自ずから有効な作戦も違ってくると思います。


※なお道場の見学はいつでも歓迎いたしますのでお気軽にお出でください。


トップページへ