2019/08/22
トレーニングの回数や強度についての多くの質問をいただいております。
このホームページで今まで多くのトレーニング方法を紹介してきましたが、
私自身も多くの試行錯誤を繰り返して今日に至っております。
例えば週3回100回の腕立て伏せ、とか最低一日一回の懸垂。
あるいは毎日最低300回の正拳突、正面蹴などです。
今これらをあらためて検討してみると、いくつかの考察が欠落している事に気づきました。
私も若い頃は、技の精度、筋力のアップや破壊力の増強、心肺機能を強化といった点にトレーニングの重点をおいていましたが、現在は少し考え方が変わってきました、というか幅が広がっています。
現在私はトレーニングを二種類に分けて考えております。
一つは、従来どおりの筋力アップや持久力アップを目的としたもの。
もう一つは無駄なパワーを使わないスキルのアップを目的としたもの。
そして内容は上記のとおりなのですが、トレーニングを生活の中に無理しないで、長くつづけられるためのメンタル面に考慮したハウツーです。
筋力アップや持久力アップに関しては、昔から多くの専門家や研究者が試行錯誤を続けており、様々な方法論が蔓延しております。
特にネット社会になって多くの情報を手軽に入手できるようになり、ある意味情報過多の状況を呈しています。
私はこうした情報の中から有意義のものをピックアップする場合、一番重視しているのはエビデンスの有無です。
YouTube等を見ると多くのトレーニング方法が紹介されています。
個人だけの体験談や成功談だと、それが事実であっても、たまたまその人だけに合った方法なのかもしれません。
まず大切なことは厳密な統計学的な処理とまではいかなくても、ある程度の人数、期間で、実証されているかどうかを私は重視しています。
現空研では、数十年の私の指導の元で、修練を積んだ会員がそれぞれの個人の能力の向上を見せてくれる事が私の理論の根拠となっています。
現空研の会員は、長く空手を続けている方がとても多い、というのが特徴の一つとしてあげられると思います。
そしてその多くの方々が中高年を過ぎても、たぶん現在が生涯で最強だと客観的に見ても感じられる事です。
人生の若い頃、一瞬すごく強い時期があったということではなく、生涯において高いパフォーマンスを維持できて、なおかつ向上を続けられる。
これが現空研の目指す空手の道であり、現実もその理想に近づいていると自負しています。
そのカギを握っているのが現空研でここ10年くらい特に強調している「脱力」という概念です。
これは、最初に述べたトレーニングのうち、筋力アップに属するものではなく、スキルのアップに関したものです。
「無駄な力を抜く」という言葉は空手に限らず、あらゆる武道、スポーツはおろか、ダンスや楽器の演奏などでも古くから言われていることです。
そして仕事や生き方といった広い観点からも良く聞く言葉でもあります。
しかし、あまりにも言い古された言葉なので、ややもするとその言葉は精神論に傾いた捉え方をされる事が多く、理詰めで突き詰められる事はあまりないように感じます。
私は自分が身を持って体験した多くの空手の組手で相手がダウンしたケースを考えると、満身の力をこめた突きや蹴りではなく、何気なくフッと入った突きや蹴りで相手に想像以上のダメージを与える事が多かったということに気が付きました。
このことは多くの空手家や格闘技経験者も思い当たる点があると思います。
私はこの脱力を精神論ではなく、純粋に力学的に解析して誰もが、一定の訓練をすれば身に着けられるようにしたいと考えています。
その一端は現空研の道場で既に一つのプラクティスとして実践しています。
文章に書くのはとても難しいのですが、カギは回数にあると思います。
10回やったらヘトヘトになるというのは、脱力の稽古に適した運動や方法ではありません。
これは、筋力トレーニングの領域で、それなりに意味はあります。
しかし脱力は、100回や200回は平気で続けられなければ、それは不成功です。
100回やったらへとへとになるという突きの稽古も必要です。
それとは別に、100回どころか1000回でも1万回でもできる技術が大切なのです。
どんな運動でも1000回連続するには脱力ができていなければ筋肉は破壊されます。
ては具体的にトレーニングはどの程度の負荷をかけて、どれくらいの回数やれば良いのか、そしその頻度は、週に何回か、といった問題になります。
昔は筋トレなら週に2、3日、オールアウトするまでなんて考えていましたが、体力は個人差が大きいので、多少の筋肉痛はあっても疲れが週を通して蓄積しない範囲で、あれば何回でも良いと考えております。
筋肉痛以外の疲れが翌週も残るようならオーバートレーニングだと思います。
突き、蹴りに関しては脱力を意識してやれば、毎日100回や200回はおろか1000回2000回でも構いません。
これは翌日疲労が残らなければという条件です。
トレーニングに関してはもう一つ重要な点があります。
それはメンタルです。
長く続けるにはメンタルの管理がとても重要になります。
どんな理想的なトレーニングでも続けられなければ意味がないからです。
理想的なトレーニングで三日坊主になるくらいなら多少問題のあるトレーニングでも楽しく続けられるなら、長い目で見るとそちらに分があるからです。
トレーニングは長く続けるにはどうしても楽しさは必要です。
楽しさとは、トレーニング自体の面白さと結果がフィードバックされ向上を感じることの相乗効果で生まれるものです。
このことがモチベーションの維持につながり、結果的に技術の向上へと向かうのです。
純粋のトレーニングは一人でも可能ですが、やはり仲間がいてお互いにスキルの向上を感じたり、客観的な評価を得たりできることも楽しさの持続に繋がります。
道場で皆で一緒に稽古を行う意義の一つにこうしたモチベーションの維持やメンタル面の効果は無視できないと思います。
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