テロ事件や海外の紛争、戦争で世界が騒然としているが、日本のマスコミや国会、また回りの人たちの意見などで感ずることがある。
結論を言えば日本人はやさしい。
ここでいう「やさしい」は必ずしも肯定的な意味だけで言っているのではないよ。
まあそれは置いといて、
日本人は聖徳太子の頃から「和を持って尊しとする」という基本的な考えがある。
これはおそらく外来の宗教や哲学から持ち込まれた考えではなく、島国であって生活基盤を根こそぎ破壊されるような侵略や略奪といった体験をあまりしてこなかった、ある意味では恵まれた環境のせいもあったのだろう。
農耕主体の社会では皆の協力というのが生産性を上げるための絶対要件である。
したがって妙につっぱったり原則論にこだわるような原理主義者(本来の意味だよ)はあまり歓迎されないのだ。
とりあえず今年の収穫をあげるためには、とりあえず皆で協力して、少々のごたごたがあってもとりあえず仲直りしておく、というのが最終的には良い結果を有無というのを体験的かつ歴史的に知っている。
日本人にとって最もありがたい言葉は「無事」である。
何事もないというのは、普段と変わったことが無いという意味である。
今日は昨日と同じであることが最もよ良く、昨日は去年と同じ去年は10年前と同じ、先祖から子々孫々まで営々として無事であることが最も望ましいことなのである。
この「無事」を良しとする考えは集団が草食動物のようにお互いを餌とし合わないような本質的な平和動物であれば、逆にいえば草食動物が平和にたらふく食える環境であれば極めて正しい考えである。
しかし、この理想的社会は、無事を良しとしない生き物が一匹でも乱入するとたちまち崩壊してしまう。
羊の群れの中に一匹の飢えた狼が乱入したことを考えて貰いたい。
狼は手近の羊からこれを食っていくことになる。
狼の行動を非難するのは、一方的に羊の側に立った考えである。
狼にとって羊を食うということは自己の生存、そして子供たちの生存を守るための先祖から続けている由緒正しい行動なのだ。
狼の幸せと羊の幸せは決してかみ合うことはない。
私は羊社会と狼社会を調停するためにこんな話をもちだしたのではない。
羊社会の有識者(?)に「話し合いこそ紛争を解決するための最良の方法だ」、と言わせてそれを笑い飛ばすためにこんなつまらない例え話をしたのでもない。
羊社会と狼社会の平和共存は原理的にありえないことは明白である。
自然の調和とは一定割合の羊が狼の餌食になることを前提としてなりたっている。
人間は羊と狼の両面性をもった生き物だ。
生存の根本をなす食体系も雑食であるし、無事を良しとする草食動物的な考えもあれば、主義主張や生存のためと称して殺し合いもする。
ここにいやな事が起こる根本原因がある。
一方いやな事を見たくないというのは誰もが思う本音である。
しかし、見なければ存在しないということにはならない。
現実はテレビケームのようにリセットして消し去ることはできないのだ。
鯨が浜に打ち上げられて、これを助けるために大騒ぎをしたニュースがあった。
鯨が浜に打ち上げられることは昔から時々見られる現象でそんなに珍しいことではない。
しかし、鯨を助けるために大騒ぎをするようになったのは最近のことである。
食料事情が悪かった時代では、これは神からの授かり物としてありがたく頂いたそうである。
鯨の側から見ると、運命の分かれ道は人間の腹具合次第であるということだ。
ジャングルで猛獣と遭遇した人間の運命もその猛獣の腹具合で決まることが多い。
運悪く腹らぺこの猛獣と顔合わせをした場合、この危機的状況を避けるために必要なことは何だろう。
話し合いでないことだけは明白だ。
そんな所に行かなければ良い、という考えを声たからかに言う連中が必ず居る。
確かに頭の良い草食動物は極力危険な場所には近づかないようにするだろう。
しかし、全ての草食動物が肉食動物の前から姿を消せば肉食動物は存在できなくなる。
肉食動物は悪魔の化身だから全滅するべきだ、と主張するなら良し悪しは別としてそれなりの筋は通る。
しかし、自分が肉食動物だったら、オレは罪深い存在だから自殺することに決めました、と言って実行するのかね。
草食動物は「善」で肉食動物は「悪」という考えは馬鹿げているようで、結構信じている人は多い。
そのくせ、テレビなんかで母親ライオンが子育てのために必死に狩をするようなシーンになると完全に肉食獣になりきって見ている。
草食動物の幸せと肉食動物の幸せはかみ合うことは絶対ない。
まず、現実としてこれを正視しなければならない。
そしてどちらかが悪という考えも間違いである。(それなりの筋は通るがね)
正義は一つだという考えは争いを恒久化させる。
それは草食動物の正義を狼に押し付けてみれば理解できるだろう。
狼も草を食べるべきだと主張されたら、狼はどうすれば良いのかね。
今日はこの辺で筆をおくけど、この話はこれで終わったわけじゃないよ。
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