Nito(兄)二段 渾身の20人組手

2010/09/27


2010年9月26日目黒道場にてNito(兄)二段の20人組手を行いました。

目黒、世田谷の精鋭に加えて我孫子からも強力な援軍(?)が駆けつけました。

 

K会系の大会で活躍を続けているSionaka初段も応援に駆けつけ、私からの対戦要請で刺客の一人とセコンドの二束のワラジとなりました。

また、仕事の拡大のためしばらく稽古にでられなかったNamekawa初段も駆けつけ本当に多彩なメンバーとなりました。

 

  1. Morikawa3級 (他流派フルコン、キック経験者)

  2. Matui3級 新進気鋭の若手

  3. Takamori2級 入門時とは別人のように進化した中堅茶帯

  4. Mizuo初段 第二回現空研大会 一般部軽量級準優勝

  5. Iguchi初段 目黒道場の暴れん坊

  6. Orikasa初段 第三回現空研大会 一般部軽量級準優勝

  7. Enomoto初段 第一回現空研大会 一般部軽量級優勝

  8. Nakagawa初段 第三回現空研大会 壮年部軽量級優勝

  9. Sonoda(T)初段 第一回現空研大会 一般部中量級準優勝

  10. Ozaki初段 第一回現空研大会 壮年部軽量級準優勝

  11. Endo初段 第三回現空研大会 壮年部中量級準優勝

  12. Namekawa初段 第二回現空研大会 壮年部軽量級優勝

  13. Saisyo初段 第二回現空研大会 壮年部中量級第3位

  14. Sionaka初段 k会館にも所属し数々の対外試合で優勝も含めて入賞多数

  15. Uno二段 我孫子道場のベテラン強豪

  16. Kawabe二段 第二回現空研大会 無差別級第3位

  17. Suzuki(R)二段 第二回現空研大会 無差別級第準優勝

  18. Takagi(M)二段  第三回現空研大会 壮年部重量級準優勝

  19. Kamioka二段  第三回現空研大会 壮年部重量級優勝

  20. Uchida初段  第三回現空研大会 無差別級優勝

(上記経歴等に誤りがある場合は連絡下さい)

 

なお20人組手の最終対戦者は当初Kamioka二段を選抜しましたが、Kamioka二段の希望で外し、現空研今期大会で無差別級優勝の実績をかってUchida初段としました。

Kamioka二段は、かつて我孫子道場で最終対戦者となり相手をダウンさせた経験があるためこのメンバーの強力さを見て、自分が最後に倒す役になるかもしれないのがいやだったようです。

 

後でこれは全くの杞憂だったと感想を述べていました。

しかしこの20人組手は、決して楽な展開ではありませんでした。

 

結果としては素晴らしい完遂となりました。

特に、最後まで正攻法で真正面から対峙し、自他共に誇り高い組手に徹したところが素晴らしかった。

 

しかし高いレベルでの反省点も少なくありません。

まだまだ伸びる可能性を大きく持っているNito(兄)二段の今後に期待しながら試合の顛末を述べてみます。

 

最初は余裕のすべりだしでしたが対戦者が黒帯に変わると様相は徐々に変化を見せてきます。

Nakagawa初段とは激戦の末引き分けとなりますが、ここで最初のスタミナを消耗したことが感じられました。

 

この試合は内容が濃く、試合としてとても興味深い展開でした。

Nito2段の長い手足を生かした懐の深さを持ち前の飛び込みのタイミングとスピードで突破口を作ろうとするNakagawa初段と、それは先刻承知のNito二段との火花のちるような攻防が展開されました。

 

Nito二段は相手のタイミングを見切って長いリーチを生かしたカウンターの突きと前蹴りを効果的に使いました。

そしてそれは中段の前蹴りの技ありをとる事につながります。

左 Nakagawa初段 右Nito二段のカウンターの前蹴    左 Nakagawa初段の上段突き

 

一方そうしたカウンターの攻防の経験を十分に積んでいるNakagawa初段は、相手の動きの先読みで先の先を取る動きに徹します。

抜群のタイミングで上段突きの有効技を二つ奪います。

 

こうして互いの長所を出し合った火花の散るような攻防の末引き分けとなりました。

しかしこの試合でスピードが落ちてきたのは歴然となります。

 

次の9人目のSonoda(T)初段との対戦では最初の疲労のピークがやってきた事を感じさせました。

普段はめったにもらわない大技のかかと落としをノーガードの状態でもらいます。

 

私の場所からはその時は見えませんでしたがその後ビデオで見ると反撃で突きを出し紙一重のタイミング差で逆にカウンターの突きをもらっていることが分かりました。

鼻血が出たのはこの時のものだったのは後から分かりました。

 

もちろんこの突きはポイントにはなりませんが最初の蹴りで技有りを取られ、もしこの突きがきれいに止まっていれば有効を更に取られるかもしれないタイミングです。

 

左 Sonoda(T)初段の踏み込んでの踵落とし

 

右 Nito二段は必死の反撃に転ずるがクロス気味のカウンターで反撃される。

 

今回の組手で最初の黒星となりました。

もちろん地力はぴか一ですし、技術、スタミナ、精神力も抜群のものを持っているのですが、20人組手となると魔物が潜んでいるのです。

 

その後は戦法をややスタミナ温存も考慮した展開に見えました。

しかし、上級者は簡単には相手を休ませません。

 

特にEndo初段は持ち前のパワーでがんがん前に出て行きます。

Nito二段は致命傷はもらいませんが徐々にスタミナを浪費させられていきました。

 

そして12人目は15人組手を前に仕事のため中断を余儀なくされたNamekawa初段です。

しばらく稽古から遠ざかっているので今日は応援に回るとの希望でしたが、体調は良さそうだし、なにしろ15人組手を想定して鍛えた貯金もかなりあるので出場してもらいました。

 

本人は謙遜しますが、技の切れはさすがで要所要所でみせる大技は一瞬冷やりとさせられる事も少なくありませんでした。

 

左 Namekawa初段の後蹴                   左 Namekawa初段の下段 Nito二段の上段

  

14人目のSionaka初段との対戦も面白い展開となりました。

ここのところK会館や新K会館などで試合向けの稽古を積んでいる彼はもっとも充実していることは体型からも分かります。

 

しかし、試合が始まってみると、私は「おやっ」と違和感を覚えました。

多彩な技を繰り出しますがいま一つ切れがありません。

 

本来彼の持ち味であるカミソリのような鋭さが感じられないのです。

どうも変です。あえてスピードを殺しています。

 

業を煮やしたのかNito二段が変則的な構えを取ります。

現空研大会でもUchida初段と対戦したとき取った構えで、これが原因とは言えませんが結果としては優勝を逃すことになりました。

 

確かにある状況では効果もありますが、王者のとる戦法ではありません。

そう思った瞬間、Sionaka初段の下段の後回蹴が絶妙のタイミングでNito二段の軸足に炸裂します。

 

やはり、最初のスピードを殺した動きは意図的なものでした。

リズムを掴みきれないまま、的を絞れないNito二段に満を持してSionaka初段が裂ぱくの上段回蹴りを放ち技ありを取ります。

 

右 Sionaka初段 裂ぱくの気迫で繰り出した上段回蹴

 

Nito二段はまんまとその術中にはまりました。

その後Nito二段は正攻法にもどり攻勢をかけますが既に残り時間はわずかであり取り戻すことはできませんでした。

 

完敗と言ってよいでしょう。

最初の切れのないように見えた攻撃はこの一瞬のための作戦だったのか、その後の2次会にSionaka初段は参加していませんので聞いていません。

 

後でNito二段にこの話をしてみると。

「ウーン、そうだったかもしれませんね」、と話していました。

 

そして後半15人目からいよいよ二段の登場です。

ここからいよいよ真価が問われる地獄の後半戦が始まります。

 

15人目のUno2段は独特のアップライトスタイルで突き、蹴りともバランスの取れた万能タイプです。

開始早々軽いステップを踏みながら正拳を上下に使い分け、時折回し蹴りも繰り出します。

 

一方スタミナの配分も考えなければならないNIto二段は、どっしりと落ち着いた構えで応戦します。

しかし、パワーのあるUno2段は軽めの攻撃を休みなく続けNIto二段を休ませません。

 

Nito二段はときおり、一瞬の隙をついた大技を繰り出そうとしますが、疲労がたまりいつものタイミングでカウンターが出せません。

しかし、まだまだ秘めたパワーは十分で静かな中にもレベルの高い攻防となりました。

 

結果は引き分け。

 

左 Uno2段の突き刺すような前蹴                 右 Nito二段の良く上がる足が顔面を襲う

 

 

16人目は、目黒道場のライバルKawabe2段です。

Kawabe2段は派手なところはあまりないのですが、少林寺拳法も四段の腕前を持ち、基礎的な技、パワー、そして撃たれ強さはNito二段に匹敵する潜在力の持ち主です。

出足は互いに下段を打ち合う展開となりました。

 

しだいに接近しての打ち合いに転じ、時折Kawabe2段が上段回蹴を放ったり、Nito二段の膝蹴りが飛び出します。

見た目の派手さはあまりありませんが、終始接近戦でのフルコンでの打ち合いは消耗戦となり、スタミナを最後まで維持しなければならないNito二段にとっては厳しい展開でした。

後でKawabe二段に聞いたのですが、蹴りの威力は16人目とは思えない重さがあり、それをもらわないようにするため最後まで緊迫感のある組手だったということです。

 

右 Kawabe二段の上段回蹴                   左 Nito二段の強烈な膝蹴り

 

17人目は目黒の暴れ竜ことSuzuki(R)二段です。

現空研大会では後一歩のところでNito二段に遮られる事が多く、今回もこの組手に対する意気込みはすごく、仕事での徹夜明けで参加する気合の入れようです。

この試合も出足は静かでした。

最初はSuzuki(R)二段が下段の回蹴に集中します。

そして、Sionaka初段の時と結果的には似た展開となるのです。

下段の外、中としつこく打ち分け、中段の突きも交えます。

Nito二段がじらされながらもタイミングに慣れたころ、Suzuki(R)二段はフェイント気味の右上段の突きを出します。

そしてその突きに反応したせつな、狙い澄ませた初めての上段回蹴を放つのです。

この蹴はノーガードのNito二段の上段を捉えます。(技あり)

Nito二段はしてやられたりといった笑みをうかべます。

 

しかし、今日のNito二段は相手にポイントを取られてもあわててそれを取り返しに行くといった軽率な組み立ては一切しませんでした。

常に冷静に自分の空手に徹するところが見事です。

とはいえ、やはり静かに反撃体制をとります。

Suzuki(R)二段は中間距離からのバワーのある突き、蹴りといった展開を得意としています。

Nito二段はリーチを生かしたアウトレンジの攻撃もできますが、良く上がる足を利用し接近して圧力をかけながら相手が防戦一方になった隙をついて上段回蹴で決めるという形を持っています。

中盤からはこの接近戦で反撃に転じました。

いつもはこれに付き合う事の多いSuzuki(R)二段ですが、今日はすかさずステップして自分の距離で終始突き、蹴りを連発する戦い方に徹します。

これで、筋肉も疲労してきたNito二段はなかなか自分の土俵に相手を引っ張り込むことができなくなり、取り返すことができないまま終了となりました。

 

左 絶妙タイミンクで上段回蹴を決めるSuzuki(R)二段     右 Nito二段 足をとって下段に回蹴を放つ

 

 

18人目は今回15人組手を完遂したTakagi二段です。

Takagi二段は、15人組手を完遂した後、一皮むけたように組手のレベルが上がりました。

もともと、伝統系の指導員までしていた経験からくる上段への鋭い突き技に加えて、その恵まれた体力を利した中段の前蹴、や上段の回し蹴りに一層の磨きがかかっています。

果たして、今回も試合開始からフルパワーの攻勢を仕掛けていきます。

冷静に対処する Nito二段ですが、もはやパワーで押し返すスタミナは残っていません。

立て続けに上段の有効技を食ってしまいます。

それでも心は折れず、一瞬の隙を突いての上段突きを返しますが、後半は繰り出す反撃の突きも目に見えてスピードが落ちてきて、この試合も取られてしまいました。

 

右 Takagi二段の体重を乗せた前蹴               左 Takagi二段

 

19人目は我孫子の怪力アビ二段の登場です。

アイスホッケーで鍛えたパワーは破壊者の名をほしいままにする強者です。

開始早々強烈な右中段回蹴を放ちます。

そして内臓をえぐるような重い中段の突き。

そして得意の下段を放つとさすがのNito二段も疲労の極にあるためたまらず宙を舞って転倒させられます。

Nito二段はあごを引き、適切なタイミングで受身も取っていたのでダメージは軽微だと私はその時は判断しました。

しかし、後でビデオで確認すると、万全の体制ではあったのですが後頭部を打っていました。

あごを引き、適切な受身をとったにもかかわらずもはや体力の限界に近かったのだと思います。

私はすぐ続行を命じていますが、ここはしばらく中断させるべきシーンでした。

それでもNito二段の敢闘精神は微塵も失われていません。

冷静に状況判断しながら時折上段を狙う大技も繰り出します。

しかし20kg以上重いアビ二段の重圧は徐々に反撃の力を奪っていき最終的に引き分けにもっていきましたが、限界は近づいていました。

 

 

 

 

そしてついに20人目に達しました。

相手はこれまた体重110kのUchida初段です。

Uchida初段は今年の現空研大会の無差別級優勝者です。

まだ荒削りではありますが、恵まれた身長、体重、筋力、運動神経に加えて、稽古熱心で努力家でもあります。

またどんな強敵にも物怖じせずに攻勢をかけるガッツの持ち主です。

Nito二段の20人目の相手として不足はありません。

 

この試合は双方死力を尽くした激闘となりました。

Nito二段はもはやいつものNito二段ではありません。

19人との激闘を経た瀕死の状態なのてす。

そこでこのUchida初段の挑戦を受けるのです。

 

私は常日頃、「戦いは自分十分の中で行えることはまれである。体調不十分であったり、怪我をしたり、あるいは致命的なダメージを受けた場合でも、その与えられた条件の中でベストの戦いを考えることが重要だ」と言い続けています。

この試合も、Nito二段がこうした極限状態でどのような組み立てで戦うのかを見ることが目的です。

 

試合は開始されました。

最初からグイグイと前に出て圧力をかけていくUchida初段。

彼は彼の空手に徹しています。真正面からの堂々として空手です。

一方Nito二段もこれを正面から受け止めました。

 

Nito二段は上段の突きで攻めますが、Uchida初段も相打ち覚悟の反撃技を返しポイントを取るほどの威力になかなかなりえません。

Uchida初段はもっぱらダウン狙いの効かす中段攻撃に集中します。

突き、蹴り全てフルパワーの猛攻です。

一方カウンターで巧みにそれをかわしながら反撃にでるNito二段。

それでもジリジリと後退させられる場面が増えてきます。

押してはいるのですが、研ぎ澄まされたカウンター攻撃のためいまひとつ攻めきれないUchida初段。

 

壮絶な打ち合いの中で2分間が終了しました。

勝負は引き分け。

 

その瞬間走りよって頭を下げ手をとるUchida初段。それに応えるNito二段。

回りからの割れんばかりの拍手に包まれて全員に挨拶をするNito二段。

私の「20人組手完遂」の宣言でこの激闘が終わりました。

 

 

 

20人目の試合開始 対峙する二人

 

右 Nito二段の強烈な上段突                    左 Uchida初段の重い連打

 

壮絶な打撃戦                            左 Nito二段の上段突

 

戦い終えて

久々に渋谷で打ち上げ。

 

左 Nito二段                             本日女子部で5人組手完遂のKuboさんも一緒に

 

 

今改めて振り返ると、様々な思いが去来します。

私が思い描く理想の現空研の空手に様々な会員たちが少しづつではありますが近づいています。

 

Nito二段自身も打ち上げの時に言っていましたが、様々な課題を見つけたと思います。

課題を見つけた時点でもう既に強くなっているのです。

自分の欠点を感ずる能力こそがその人間の成長力なのですから。

 

まだ正式発表には至りませんが、大きなステップを駆け上った若者が誕生しました。

現空研の10人組手、15人組手、20人組手はこれを達成した者、対戦した者、それを生で見た者、それぞれが大きな感動を持ったはずです。

 

達成した者は、自分が何者になったのか、そして今何者であるのかを噛み締めていただきたい。

今日の一日は長い人生の中では一瞬の出来事かもしれませんが、何か困難に直面したとき、自分を信ずる事ができる大きな材料になる事は私が保証します。

 

今日は素晴らしい一日でした。

 

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