では強くなるには具体的にどんなトレーニングを行えばよいでしょうか。
精神論はさておいて、技術的、体力的な話に絞ります。
前提はあなたが普通のサラリーマンで、どちらかというとひ弱なタイプだとします。
週に一回の道場通いは可能で、1日1時間位は自主トレーニングの時間を割くことができるとします。
目標はマチのチンピラの素手による暴力を撃退する程度。
しかし、余裕で撃退できる力の獲得です。
まず、あるレベルの体力は最低限必要です。
例えば、腕立て伏せが一回もできないとか懸垂が一回もできないという体力ではかなり難しい。
※お相撲さんで懸垂できない人は多いですが、大抵の人は一発で吹っ飛ばされてしまいますから、あくまで一般的な体型の人でのお話です。
たとえば、貴方が週3回100回の腕立て伏せと50回の懸垂を半年続けたら、
それだけで相手が素人なら簡単に勝つ程度の力を持つことができます。
可能なかぎり連続で行い、駄目なときは少し休んで合計の回数で構いません。
ダンベルやバーベルを使える幸せな環境をお持ちの方ならなおさら有利です。
先の例にスクワットを入れるとほぼ完璧です。
知り合いにボディービルダーがいれば言うことはありません。
大抵のボディビルダーは筋力トレーニングの知識に関しては、下手な格闘家は足元にも及びません。
彼らの筋肉は見かけだけだとか格好だけだという偏見がありますがとんでもない。
筋肉に見かけの筋肉なんてありません。
格闘家と比べると心肺機能(エアロビクス)に関して少し関心が薄いかなといった程度です。
生活時間のほんの僅かな時間だけ筋力トレーニングに割きます。
これでぜんぜん違ってきます。
目標は筋肉だけで5kgの体重増加です。
10kg増やせればなおグッドです。脂肪は減らしたほうが良いという程度です。(体型にもよりますが)
次に重要なのは、基本の習得です。
まあこれが一番重要なのですが。
正拳の上段と中段。正面蹴りの中段これだけを徹底的に稽古します。
空打ちとサンドバック(あるいは巻わら)両方必要です。
毎日300本は最低行います。
もちろん正しい突きと蹴りでなければ意味がありません。
最初はきびしい上級者の指導が必要です。
一旦正しいフォームがわかれば後は一人でもくもくと続けます。
第3は組手です。
どんなに体力があってもどんなに技が切れても、実戦の経験がなければ強くなれません。
技を覚え、体さばきや攻守のタイミングを覚えるのは寸止めの稽古が最適です。
しかし、勝つ必要はありません。動きに慣れることが目的です。
特に顔面への突きや間合いの見切りといった勘を養うにはなくてはならない稽古です。
次に必要なのは実際にあてる感触を体験しなければなりません。
これはフルコンタクトが一番なのですが、初心者ではケガや故障がありますから、防具を付けたほうが良いです。
防具を付けるほうが楽かと言えば決してそんなことはありません。
防具を付けることによってお互い遠慮がいらなくなりますから、思い切り突き蹴りを入れることができます。
やってみればわかりますが、本当に強い人と道場で稽古として対戦すると防具なしよりありのほうが恐怖感が涌いてくるものです。
防具無しの場合はフルコンタクトといえども、道場ではお互いある程度の遠慮が働くからです。
たとえば、大腿骨に直角に当たる打抜くような下段をもらったら、フルコンタクトの経験のない人は大抵一発でKOされます。
(うそだと思ったら通っている道場でだれかに思いきり大腿部をノーガードで蹴らせてみて下さい。)
ある程度鍛えて慣れていてもかなり効きます。後でいっぱいビールを飲もうと思っている仲間にこういう蹴りはなかなか入れにくいものです。またもらいたくもありません。
せいぜい足を払って転ばせる程度の蹴りになりがちです。
突きにしてもそうです。ちょうどよい位置に相手の胸元がある体勢になっても、肋骨を折るような突きを入れることは躊躇します。
じつはフルコンタクトの問題点はここにあるのです。
強い人は道場で弱い人には渾身の力で突いたり蹴ったりすることがはばかられるのです。
自分が強くても相手が挌下の場合でも本気に近い突き蹴りを入れることができる。
ここに防具をつけた組手稽古の最大のメリットがあるのです。
それから、相手が誰であっても動く標的に会心の一発を当てるのがいかに難しいかということもわかります。
また、技はたいしたことなくても生まれつきパンチの重い人やスピードはあってもこの人のパンチはちっとも効かないな、といったことも体感としてわかります。
それから、防具付きでフルコンタクトをやると、鍛えてない人は手も足もかなりダメージを負ってしまいます。
それくらい人間の手足は弱くてキヤシャナ造りなのです。どんなに鍛えても鍛えすぎということはありません。
思い切り力を出しきる稽古が可能な防具付フルコンタクトは絶大な効果があります。
ただし、ここでも重要なのは勝つことではありません。強くなることです。
防具付ルールでの勝ちかた(テクニック)を覚えても意味がないことは前にも述べたとおりです。
最後に重要なのは、防具なしのフルコンタクトです。
これもやってみるまではわからないことですが、防具がある場合と無い場合は、当たったときの感触がまるで違うのです。
この感触をつかんでいないとボディーへの突きを効かすことは難しくなります。
一言で言えば、力いっぱい(のつもり)でなぐった場合は相手が鍛えていれば殆ど効きません。
ここらへんは言葉でいうのは難しいのですが、「重量感のある力みのない突きをヅンと入れる」といった感じが一番効きます。
これも実際にもらうことで触感として理解できます。
グラブを付けたボクシングのパンチとも違います。
素手の拳での最も効く突き方というのがあるのです。
以上のことを頭に入れて半年トレーニングを続けて下さい。
少なくとも相手が素手の素人であれば、どんな暴力を振るわれたとしても不覚をとることはなくなります。
えーと先手でなくても大丈夫です。顔でなければ一発位なぐらせましょう。
殴られ慣れている貴方はぜんぜん痛くないですから。
それからゆっくり反撃します。