こんどの新しい道場は、もともと柔道場と剣道場なので畳があります。
これは実に嬉しい。
今までの道場は去年の改装で床が硬くなり、危険防止のため、足はらいや立関節技は禁止していたのです。
この畳のおかげてこれらの技を解禁できます。
私はたまたま最初に教わった先生が空手の突き蹴り技は当然としても、関節技も習得しておられたのでこれらの技をいやというほどかけられまたその技を教えてもいただきました。
その有効性を身を持って体験していますので、関節技の習得は現空研では必修です。
関節技を覚えるとその技による攻撃力の増加という点以外にもいろいろな利点があります。
その一つは人間の骨格の構造が分かるという点です。
構造が分かるといっても、解剖学的にわかるという意味ではありません。
格闘とう観点からの人間という構造体の特徴、もっと言えば欠点を理屈抜きで把握できるようになるのです。
昔、外国の大使のボディーガードと対決させられそうになっとき、結局何もしませんでしたが、そのとき最後に握手したとき、やはり瞬間的に頭の中では関節技をかけていました。
関節技を長くやっていますと、人の体にさわっただけで、その人の弱点がなんとなくわかるような感じがしてきます。
腕を取るだけで、この関節のこの角度が弱点だということを感ずるようになってくるのです。
この感覚は格闘技では大変有効な武器になります。
突き、蹴りに疲れてもつれてきたり、相手に組まれ場合、(関節技の立場から)無意識に自分有利の形になろうとし、またなれるからです。
その体制は実は、突き蹴りに関しても有利なポジションなのです。
現空研空手の特徴として極めて接近した体制からの上段蹴りがあります。
普通ではとても蹴りを出す間合いではないところからの蹴りです。
これを習得するには柔軟な体と基礎的な筋力、それに一種のリズム感のようなものも必要です。
私は、この蹴りをあみ出した最初のきっかけは関節技でした。
立ち関節に入るには独特の間合いとタイミングの習得が不可欠です。
技そのものの基本的な動作はもちろん眠っていてもできるくらい習熟する必要があります。
空手は本来突き蹴りを主体としていますので、慣れるまでは関節に入るのは決死の覚悟がいります。
のそのそ掴みにかかっていると一撃で倒されてしまいます。
ですから空手の関節技はかける瞬間まで相手に関節技であることをさとられてはいけません。あたかも突きのごとく攻撃をしかけ、ある間合いになるや一瞬にして関節をかけてしまう必要があるのです。
この間合いをつめる稽古を繰り返し行っているとき、ほとんどの空手家は至近距離になれば、ほとんどの神経の大半は突きの防御に割かれることに気がついたのです。
突かれることのみに神経を集中させている腕をとるのは極めて簡単です。
ボクシングの接近戦の体制を考えて下さい。
あの状況では腕をとるのはわけないことです。
しかし一方この状況は足さえ上がれば蹴りにも絶好のポジションなのです。
関節技の間合いに入る稽古が思わぬ副産物を生んでくれました。
それから、もう一つ関節技を覚えると有利な点があります。
それは、相手が組み技系の人であった場合、組まれてもこちらにも武器があるということです。
こちらに関節技の武器があるということは、相手に知られても知られなくても戦いの場では有利に作用します。
知られていれば、相手は常に腕を取られることを警戒するようになります。
その分こちらは、突き蹴りに対して防御が薄くなったぶん攻撃がやりやすくなります。
知っていなければ、不用意に相手が接近したとき技をかけるだけの話です。