平成16年11月21日 元全日本大学空手道選手権大会優勝者の市川さんが、師範の榊原先生(五段)、小山先生と出稽古に来られた。
その時の稽古の詳細を写真およびビデオのコマ送りで紹介したい。
また、技術的に興味深い展開は特に私の分析を交えて解説したいと思う。
パンチ 対 Miya
市川さんの組手の前に、現空研の組手を紹介する意味もこめて行った模範組手である。
パンチは父親は元協会指導員で本人はボクシングライセンサーである。
現空研では中堅の黒帯である。
Miyaは大手企業の管理職で社会人になって空手を始めた。
道場には皆勤に近い出席率で飛び級を挟んで現在は1級である。
開始早々パンチの逆回し蹴り Miyaの左中段回し蹴
パンチのボクシング仕込みの右中段かぎ打ち(ボデーブロー)
Hagi 対 Kubo
Hagiは東大大学院卒で大手コンピュータメーカーのシステムエンジニア。
格闘センスがあり、着実に実力を着けている。
Kuboは学生の頃現空研に入会し、役人になった今社会人として空手を続けている。
目標は最強の公務員。
Kuboのモーションの少ないリラックスした前蹴り。
Hagiの体重の乗った中段突き対Kuboの前蹴り。
Kubo良く伸びる上段の前蹴り Hagiの右上段回し蹴
Hagiのしなりのある上段回し蹴り
Kuboのカウンター気味の前蹴り
師範対決の再現 (ロボコップ 対 小山先生)
麗澤大学における合同稽古における名勝負の再現となった師範対決である。
今回は小山先生は右回し蹴から右上段突きの連続技を何回も試されていた。
ロボコップはいつものように不動の体制からの鋭いカウンター攻撃で応戦。
短い攻防の中にも緊迫感溢れる組手が展開された。
始め
小山先生鋭い踏み込みから上段回し蹴り、ガードが下がるのを見越してそのままの体制で右上段突きで技有り。
フルコン空手ではなかなか見られないテクニックである。
上記と全く同じパターンの小山先生の攻撃。パターンを読んだロボコップは、受けた手ですかさず顔面へのカウンター攻撃。もう一歩踏み込みがあれば技有りだったのだが。
これも同じパターンの攻防であるが、ロホコップ今回は足を取りに行く。
小山先生の多彩な攻撃は続く。これは後ろ蹴り。
今回は小山先生はステップを多用し、極めの攻撃を上段突きに集めてきた。
不動の体制でスキをなかなか見せないロボコップに対し、動きでかく乱し、連続攻撃で一本を狙うという作戦のように見えた。
前半は効果的であったが、ロボコップが攻撃を読んでカウンター狙いに徹してからは、作戦にこだわらず、臨機応変の多彩な攻撃に移られたようであった。
何れにせよ、初心者には勿論上級者も大いに勉強になった組手であった。
Kawa 対 Ike
Kawaは今回10人組手を達成し黒帯を締めることになった猛者である。
少林寺拳法の三段を持ち、突き蹴りとも威力があり弱点が少ない。
一方Ikeも他流派防具空手の二段を持ち、各種大会の出場暦を持つベテランだ。
この試合も大変面白い展開を見せた。
Ikeはもともと足技に冴えを見せるが、今回は珍しい技で技有りを取った。
それは変形逆回し蹴りとも言える後蹴りだ。
百聞は一見にしかず、でまずコマ送りの画像を見てもらおう。
Ikeタイミングを計り踏み込む。 右足は一見回し蹴の体制である。
しかしKawa落ち着いて目線を下げることもなく左の腕は中段に構えたままである。
(ここで下段払いに入らないのは現空研の基本的な教えである)
左中段の外受けでガードできた思った瞬間、Ikeの足は逆回しにスイッチしそのままストロークを伸ばして後ろ蹴りに変化、見事上段をヒット。
コンタクトはあったが、振りぬかず、ピタっと止まったので技有り。
もう一歩踏み込みが深かったら一本勝ちになる蹴りだった。
Kawaもこのままでは終われない。
後半得意の中段回し蹴りが炸裂。
Kawaのしなりのある回し蹴りの初動。Ikeの飛び込みを「後の先」で読み回し蹴を放つ。その回し蹴は膝のかいこみが深く、しかも膝が先行しているので中段か上段か分かりにくい。
ヒットさせる直前に溜めた足先をリリースするので受ける方は体制を取りにくい。
しかもヒットした瞬間はスピードが乗るので破壊力も十分だ。
Ikeはフルコンでは危険性の高い受けの動作には入らず、体勢を引き気味にし、打撃を殺すことで対処しているが、最初の飛び込みの姿勢からは十分には引けず蹴りをもらってしまう。
しかし、この一瞬の引きがノーガードの中段に致命傷を受けることから身を守ったのである。
Ike 対 Kohi
Kohiは協会二段を持ち、現空研でも飛び級で現在は1級である。
常に前に出る積極性が技術の向上の源になっている。
今日は大先輩の小山先生の前での組手で多少緊張気味である。
相手はベテランのIke。
Kohiのスピードのある前蹴り。もう少し踏み込みがあれば相手に圧力をかけることができる。
それに対しIkeの上段回し蹴。
Kohiのたたみかける中段の突き。次の課題はいかに重くするかだ。
Take 対 ロボコップ
少年部(中学生)のTakeがロポコップ師範の胸を借りる。
学校でも空手部(伝統系)でがんばっているがまだ基本を身につける段階だ。
小山先生 対 Kawa
小山先生の胸を借りるKawa。
小山先生もリラックスして対戦を楽しんでいるようだ。
小山先生 対 Kohi の 師弟対決
小山先生はKohiの大学の大先輩に当たる。
Kohiは空手部長で小山先生にしごかれたらしい。
今日は、Kohiは防具を着けてフルコンルールで対戦。
小山先生、様子見の軽い回し蹴、それでも狙いはしっかり上段。
軽い前蹴りでも、当てているのは一目瞭然。
Kohi 上段を狙うもちょっと遠慮が?
Miya 対 Mizu
Mizuは慶応大学大学院の現役学生だ。社会人のMiyaの渾身の上段蹴りを受ける。
市川さん 対 Nito 番外編
この組手は、対戦した二人の番外の組手で、Nitoはいろいろアドバイスを受けながら稽古をしていたようだったが、ビデオに面白い動きが撮影されていたので、少し解説してみたい。
当日飲み会でも話題になった「後の先」の生きた題材をここで見ることができる。
Nitoだけではないがに少し前、鋭い飛び込みに対する対策として前蹴りのカウンターを教えた事がある。
カウンターというのは正に「後の先」の典型であるのだが、口で言うのは簡単だが、いざ実戦で使いこなすには十分な稽古の積み重ねが必要で、そうそう簡単にできるものではない。
一番大切な事は、相手の初動あるいはリズムをいかに見切るかという事だ。
このタイミングを掴めないと逆に相手のペースに巻き込まれ墓穴を掘る結果になる危険性もはらんでいるのだ。
その前蹴りのカウンターをNitoは何度も出しており、成功したパターンもあば失敗したパターンもある。
その典型的な動作を次のビデオのコマ送りで解説してみよう。
失敗例
まずは失敗例である。
市川さんの鋭い飛び込みに対し、Nitoは左の前蹴りでカウンターを取りにいこうとする。
しかし、超一流の市川選手のスピードは、それを上回り、Nitoの喉元を一瞬早く突いている。
体勢の崩れたNitoは前蹴りを出すも、それは目標を外れむなしく空を切ることになる。
成功例
次は成功例である。
市川さんの初動の踏み込みのリズムを先読みしたNitoは、相手の踏み込みの足がまだ着地する前に前蹴りの足のかいこみ動作に入っている。(これが後の先である)
市川さんが踏み込んだ時点でNitoの前蹴りの足はほぼ準備完了状態である。
(前の失敗例の写真と比べて欲しい)
市川さんの上段突きが入る一瞬前にNitoの中段前蹴りが的確にヒットしているのが分かる。
これは、典型的な後の先の姿である。
いつもこうなるとは限らないが、こうしたタイミングの取り方を身に付けることが大切であり、空手の技を奥深いものにしていくことができるのである。
イタリアで空手を始めたHori 対 Hagi
Horiは仕事でイタリアに行くことが多いが、空手は何とイタリアで習ったのが最初だ。
大変熱心で上達も大変速いのだが、運悪く昇級審査のとき日本を離れていた。
現在最強の白帯である。
小山先生の胸を借りるBan
彼も社会人から空手を始めるが組手は積極性に満ちている。