2011/08/21
今回の合宿審査の組手で最も激しくかつ美しかった試合の1つを紹介します。
それは今回初めて昇級審査を受けるSugiyama君とEnomoto初段の試合です。
Sugiyama君は海外でプロボクサーとして活躍していましたが現在は日本に戻ってきて持っている調理師免許を生かした職業で活躍しています。
そのボクシングで鍛えたパンチ力と勝負勘は流石で白帯で出場した第4回現空研空手道大会では何と並み居る黒帯を破って3位に入賞する実力の持ち主です。
現空研に入門してからは忙しい仕事の合間をぬって道場によく通い熱心に稽古を続けています。
今回はその真価を試す絶好の機会となったのです。
その第一試合に当たったのがEnomoto初段です。
Enomoto初段は第一回現空研大会一般部軽量級優勝し、参加する大会では常に上位に絡む強豪です。
もうすぐ結婚式を控え、仕事や私生活も充実した好青年です。
その技の特徴は、上下に打ち分ける巧みな足技を持ち前の格闘センスで更に磨きをかけているところです。
普段の性格は温厚なのですが一旦勝負となるとその前向きな敢闘精神はまるで別人のようになります。
試合は期待通りの面白い展開となりました。
荒削りではありますが最近蹴り技も覚えたSugiyama君はパンチだけてなく蹴り技も交えて攻撃します。
パンチのスピードと重さは流石にボクサーの技術を生かして素晴らしいものがあります。
しかし、空手においては遥かに勝るEnomoto初段は足技を巧みに使ってタイミングを崩します。
そしてとうとうその一瞬が訪れました。
誘い込むように懐に呼び込んだEnomoto初段は絶妙のタイミングでノーモーションの上段回蹴を放ちます。
Sugiyama君は恐らく蹴りは全く見えなかったはずです。
Enomoto初段は皮一枚で寸止めするはずの回蹴が軽くあごをヒットしてまいました。
意識しない攻撃を受ける時が人間は最も効かされます。
Sugiyama君は生涯初めての蹴り技によるダウンを喫してしまいます。(本人談)
夜の宴会の時Sugiyama君は「ダウンしながら感動しました」と話していました。
これほどきれいなダウンシーンはボクシングの試合でもなかなか見ることはないでしょう。
Enomoto初段は意識を失ったSugiyama君の状態をとっさに感知し、Sugiyama君が床で頭を強打しないようにすぐ支える行動にます。
もちろん主審のNakabachi師範も瞬間的に手を添えて補助しす。
Sugiyama君はEnomoto初段に抱きかかえられる形で崩れていきました。
救急救命士でもあるNakabachi師範はすぐSugiyama君の瞳孔や意識の確認をしました。
私もただちに駆けつけ意識状態、脈などを確認します。
本人もすぐ正気を取り戻し、打撃自体はほぼ寸止めの状態であった事、目の焦点もしっかりあっているし脈拍も正常だったので数分間の休息のあと試合は続行させました。
その流れを以下の連続写真で披露いたします。
左奥がEnomoto初段 右手前がSugiyama君です。
Enomoto初段の左上段回蹴が顎にヒット
完全に効かされます。
膝から崩れるSugiyama君
無意識に踏ん張りますが今度は前向きに倒れこみそうになります。
それをすかさず支えるEnomoto初段と補助するNakabachi主審
衝撃を与えないようにそっと床に寝かせます。
Nakabachi主審の診断の後、意識状態を再確認する私。
その後重量級のWatanabe(R)初段、Nito(兄)三段との強豪対戦に耐え、規定の組手を完遂することができました。
この一連の組手でSugiyama君のあふれる闘志と敢闘精神が証明されました。
一方Enomoto初段の強さと相手をいたわる優しさも証明されました。
「強くて優しい」は現空研空手がまさに標榜する人としての理想の姿です。
本当に素晴らしい組手でした。