2014/04/25
ソプラノ歌手 荒牧小百合さんからメールを頂いた。
9/26(金)プッチーニ作曲
オペラ「トスカ」の公演を行いました。友人の寺崎誠三氏が動画にしてYouTubeにUPしてくださいましたのでよかったらぜひご覧下さい。
実は、この公演の案内状を頂いていたのだが、忙しさについうっかりと返事をするのを忘れてしまい気が付いたら終わっていたのである。
しかし、便利な世の中になったものだ。
YouTubeで特等席から鑑賞できる。
YouTubeなので画像や音の情報量が少ないのは仕組み上しかたがない。
しかし上手にまとまっている。
寺崎誠三さんってどんな人なのかな。
このビデオはどんなものを使ったのだろうか。
私も空手の動画をネットにアップしているのでここらへんの苦労は良くわかる。
ちなみに私は空手の動画を取る時はZoomのQ2HDを使っている。
24bit 96kHzのリニアPCMサウンドで撮れる。
CDは16bit 44.1kHz なので一応これはハイレゾに属する。
映像は1920×1080のフルHDだ。でも映像それほどでもない。音は良い。
空手の動画なのになぜ音声を重視するのか。
私の考えるリアリティーは音が大変重要ポジションを占めるからだ。
と言ってもネットにアップするときは極限まで圧縮するのだが、それでもソースが良ければかなりの圧縮に耐えられる。
そして私は会員に撮影させるがズームは基本禁止している。
空手の動きを見るとき関心は人によりレベルにより違う。
的を得たズームならそれなりに許せるが殆どの素人カメラマンの撮影は的をはずしている。
必要な情報は千差万別であり、見たい場所は人によって異なる。
舞台上のトスカは歌っているシーンだけ見たいわけではない。
全体をありのままに伝えて欲しいのだ。
見るポイントは観客が決める。
撮影は「ありのまま」が理想だ。
であれば4k ハイレゾの固定カメラで全シーンを捉えれば良いのか。
究極のリアリティーへの欲求となればハイレゾでしょう、となる。
こうしたマニアのハイレゾ談義には私は距離を置く。
私は正直少ない情報量の世界でも芸術や武道の技術は十分に伝わると考えるし、現状のネットインフラにおいてはもっと別の分野での研究課題が多いと思っている。
このYouTubeのトスカを拝見してますますその意を強くした。
それは荒牧さんをはじめ出演されている方々やスタッフのレベルの高い技術に裏打ちされた豊かな音楽性によるところも大きい。
撮影は一見なんの変哲もないようだが、地味に良くできている。
まず無駄なパンニング、ティルト、ズーミングが殆どない。
比較的離れた位置からの撮影であるので素人ならすぐズームアップしたくなる。
しかしこのカメラマンはひたすら全景を捉える。最初は固定のままだ。
途中からカメラはターゲットを追うようになるが画角の変化は最小限に留まる。
この広い画角は私の好みなのだ。
再度言うがオペラに限らず舞台の上で行われる演技のどこを注目するかは一人一人の観客の自由であるべきと思うからだ。
生で鑑賞するばあい、自分の席は固定されておりズームなどはない。
それは各自が脳内で注目する点をとらえ最も関心のある絵や音をピックアップしているのである。
私は伴奏のピアノは常に気になる。
残念ながらピアニストの絵は少ない。でも要所では必ず入っている。
この手の動画の中では最高のできだと思う。
いやー久しぶりに見入って(聴き入って)しまった。
荒牧小百合さんの歌は生で聴いていてその素晴らしさは私は良く知っている。
生を聴いているので情報が間引きされた録音でも脳内再生できるということは当然ある。
音楽でも空手でも、その他全ての武道、芸術もまず自ら体験生する事、そして良いものをたくさん見る事が大事だ。
生の再現を目指すハイレゾも決して否定はしない。むしろソースとしての原版は可能な限り多くの情報を記録するべきだ。
一方インターネットという現状プアなインフラでリアリティーを使える技術は発信する側の技術的、文化的な深い理解によってまだまだ洗練されなければならない。
そういった意味でも彼女の「トスカ」とこのYouTubeは本当に素晴らしい。
彼女とは音楽家の集まる新年会で何度かお会いしている。
現空研の会員ではNito三段やKawabe二段、Ito二段、Ozaki初段も連れていったことがある。
最近では全盲のピアニスト岩井のぞみさんのリサイタルと打ち上げパーティーでもご一緒した。
岩井のぞみさんのピアノリサイタルに行ってきた (2014/04/25)