たのむからこんな質問しないでくれよ。
脳のない、失礼、能のないインタビュアの紋切り型質問でテレビなんかでも耳についてしようがないセリフの一つなんだ。
しかし、この前も聞いたな、ある有名なバイオリニストに対して、
「では最後に、あなたにとってバイオリンって何ですか」
で、どんな答えが欲しいの。
「バイオリンは私にとって命です。」
とか
「バイオリンは人生の全てです」
なんて言えばきっと満足するんだろうな。
見てると大抵の人は躊躇してるな。答えるのに。
そりゃそうだ。
これは質問じゃないのだ。
空手でもバイオリンでもいいんだが、それを本当に知らない人から、例えば空手を見たこともない外国の人から、
「空手って何ですか」
ときかれリゃ、
「それは、つまり格闘技の一種で、柔道とは異なり、突き、蹴りを主体とした・・・・・・・・」
なんて返事ができるのだ。
「あなたにとって」
というのがあるからめんどうくさい。
例えば、「空手は僕にとって人生の全てです」
なんていう言葉にどんな意味があるというのだ。
「じゃ空手と命どっちが大切なんだ」
なんてつっこむ馬鹿が必ずいる。
こんな屁理屈を言う奴に辟易していて、
「空手は僕にとって最も重要なものの一つ。かもしれない」
なんて無害無意味な答えを聞くと、さらに頭に来る。
がまんし、百歩譲って、この質問を、
「あたたが空手にどんなふうに出会って、そして魅力を感じ、それに取り組み、どんな成果や感動があって、今に至っているか」
という質問だと善意に解釈してみよう。
しかし、これは、もしインタビューであれば、最後に聞くことではなく、最初に聞くべきことだよ。
話せば長くなるに決まっているじゃないか。
これを残り10秒で言えって言うのか。
オレにはできない。
でも、この馬鹿な質問にビシと答えた達人がいたな。
空手ではないが。
もう亡くなられたが、電気器具のディスカウントショップで有名な城南電気の社長である。
あるテレビのインタピュアが、
「あなたにとってお金ってなんですか」
社長 「一番大事なものや」
インタビュア 「じゃお金と命、どっちが大事ですか」
社長 「そりゃー、金や」
うーんおみごと。
しかし、金でなければなかなかこういうひねった言い方はできないね。
人間どこか、カッコつけたがるからだ。
かっこの付け方は人それぞれの流儀がある。
偽善も偽悪も傲慢も遠慮も根は同じ。
わらってすまそうとするやつは、いつもヘラヘラわらっている。
怒ってすまそうとするやはいつも眉間にしわよせて怒っている。
こういう奴の答えなんて聞くだけ無駄だ。
「へへへ、どっちって、そりゃ空手ですわ。へへへ」
「なにーどっちが大事か、命にきまっとるやないけ、あほ」
やだろ、こんな答え。
だからといって、四角四面な顔から、
「オス、自分にとっては命より空手であります。」
なんて答えを引き出して、うまくまとめたなんて思わんでくれよ。たのむから。