1ランク上の空手 その3
空手の技を磨くのに心がけておきたいことの一つに他の格闘技を参考にするということを上げておきたいと思います。
空手は当然のことですが、世の中に存在する様々な格闘技にはそれぞれ長い歴史と伝統によって磨かれてきた人を倒すためのノウハウが詰まっています。
そしてこれまた当然ですが、それぞれの格闘技は異なったルールや哲学を持っています。
例えばボクシングですが、現在のボクシングはグローブを着けてナックルパートによる手だけの攻撃というルールのもときわめて完成度の高い格闘技として存在しています。
突きだけに限った場合技術としては最も洗練されているのではないでしょうか。
ボクシングの試合を観戦したり機会があればスパーリングを行うというのは空手家にとってもきわめて有効であると思います。
相撲は、私は観戦するスポーツ(と言っていいのかな))としては最も好きなものの一つです。
柔道も大好きですが、この二つの日本の代表的な格闘技を比べると、同じ組技系であってもルールの違いによりこれほどまでスタイルの違う技術体系になるのかと考えされられます。
格闘技をやっている人は常識的に知っていますが、一般の人が敢然と思っているのの何倍もお相撲さんは強いです。もし機会があれば腕相撲でもタックルでも挑戦してみて下さい。
ウエイトリフリィングやパワーリフティング、ボディービルやアームレスリングなどの筋力トレーニング系のスポーツもある種の偏見をもって見ている人たちがいます。
もし機会があればこういった関係のジムを一度たずねられたら良いと思います。
もし批判するのであれば、一度身をもって体験し、その道の一人者と何らかのコンタクトを取ってから行ってほしい。
筋肉が付きすぎたらスピードが落ちるから・・・・・
なんていう人がいます。本当に筋肉がつきすぎるレベルまでトレーニングしたことがあるのかな?
私は空手家はいろんな他の格闘技も極めなければならないと言っているのではありません。
一旦空手ときめたからには徹底的に空手に専念するというのが王道だと思っています。
しかし、他の武道に対しても目を向ける必要があると言いたいのです。
長い伝統をもった格闘技の稽古方法はそれぞれ独自のものがあります。
例えば相撲であれば、てっぽうや四股といった基本動作です。
柔道であれば打ち込みや受身といった動作です。
これらの基本には長い歴史というフィルターを通して生き残ってきた技のエッセンスが含まれています。
私は伝統的なものは、それが明らかに有害であるという明確なデータが示されない場合以外は基本的にそれを尊重するという立場をとります。
多くの偉大な先人たちの知恵の集積である伝統は、限られた時間と体験で一生を終えてしまう自分という一個人のちっぽけな頭脳ではその意義の全てを分析したり評価するにはあまりに思い上がった行為だと思うからです。
一方伝統、伝統だと言いながら、内容はたんなる弱いものいじめのようなものもあります。
最初はそうでなかったものが閉じられた閉鎖社会のなかの病原菌のように悪しき伝統としてはびこるといったケースも無いではありません。
良い伝統を守れるかどうか、それを悪しき伝統に変えないで伝承していけるかは、現場の指導者の心構えと決意できまります。
そうした伝統的な稽古方法、指導方法で歴史の評価を受けたものだけが現在残っているわけですから、たとえ分野が違っても、また方法論が異なっても現在残っている武道には深い意義と存在理由があることは間違いありません。
もっとも一言で伝統といっても空手だけに絞ってもその技の数や型など膨大な量があります。
どれを選択し、どれを尊重するかといった視点でそれぞれの流派の存在意義を考えてみるの意味のあることです。
要はその伝統を踏まえた上で、より創意工夫を重ねることにより将来への発展と飛躍があるのです。
個人レベルで考えれば、先輩の技や考えを咀嚼し自分のものとして貪欲に取り入れ、それを基本に自分なりの創意工夫を加えて精進していくのが理想的だということになります。
あらゆる偏見を除いて平らな心で周りを見る。
そして良いものは良い悪いものは悪いといった客観的な評価を利害関係やちっぽけな私心を除いて正直に行うと精神が結局は大きな意味で自分のランクを上げるということにつながるのです。